金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

麦秋

麦秋      1951年

小津安二郎監督

物語

北鎌倉に住む間宮家では適齢期を過ぎた娘紀子の結婚が何より気がかり。当の紀子は大手の会社で秘書として働き、いまだのんきに独身生活を楽しんでいる風だった。やがて、そんな紀子に縁談話が立て続けに舞い込むのだったが…

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小津安二郎。紀子3部作の2本目。

タイトルの「麦秋」とは麦の収穫期のことで、初夏のころ。紀子の遅れてきた春を表現していて、意味は前作「晩春」と変わらないか。

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傑作と名高い作品ながら、なんかピントが合わないというか、ドラマに入り込めなかった。

その理由に気がついた。

現代の日本女性の平均初婚年齢は29歳。原節子が演じる28歳独身OLの紀子さんの生活が今では普通すぎて、何も問題を感じなかったからでした。(笑)

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1950年当時の女性の初婚年齢は23歳。28歳の紀子は相当な「売れ残り」であると理解しないと話が伝わらないのです。

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紀子の縁談を家族が真剣に心配する。紆余曲折ありながら、紀子は勧められた縁談話ではなく自分の選択で結婚相手を決める。
大家族もばらばらになるが、ラストシーンで周吉と志げが豊かに実った麦畑を感慨深げに眺める・・・。

戦後社会の変わりゆく、女性、家族を描いた傑作ですね。

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※今年77本目の映画鑑賞

あ・うん

あ・うん          1989年

降旗康男監督

物語

昭和初期の東京・山の手を舞台に2人の男と1人の女が織り成す人間模様を美しい映像で描き出す人間ドラマ。中小企業社長の門倉と安月給のサラリーマンの水田は性格も境遇も対照的ながら友情で結ばれていた。しかし門倉は水田の妻たみのことを密かに思い続けていて……。

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門倉修造(高倉健)と水田仙吉(板東英二)は無二の親友だが、門倉は水田の妻たみ(富司純子)に惚れており、たみも門倉を好いている。仙吉は二人の密かな気持ちを知っているが、門倉との友情を信頼していて咎めることはなく、三人は家族のような付き合いを続ける。

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たみの娘さと子(富田靖子)も、青年(真木蔵人)に恋するが、青年に招集令状が出て別れを告げに来る。門倉はさと子に一夜だけでも思いを遂げるよう、去る青年を追わせる。

 

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子供の頃、母親が向田邦子さんのテレビドラマをよく見ていたのは記憶していますが、僕が向田邦作品を見るのは初めてです。

複雑な人間模様を力強く描いていて面白いですね。向田邦子さんは、飛行機事故で51才で亡くなりましたが、本当に惜しい才能だったと思います。

※今年76本目の映画鑑賞

 

 

 

キャプテン・フィリップス

キャプテン・フィリップス   2013年

ポール・グリーングラス監督

物語2009年4月、ソマリア海域を航海中のコンテナ船、マークス・アラバマ号を海賊が襲撃。武器を所持していた4人の海賊に、武装していなかったアラバマ号はあっという間に占拠されてしまう。船長のリチャード・フィリップスは、20人の乗組員を自由にしてもらう代わりに自らが海賊の人質となる。

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トム・ハンクスブルース・ウィリスに見えるくらいカッコいい。機転と勇気ある船長の行動に感動。スリリングな展開で見応え十分。実話を元にしているがエンタメとして楽しめる。

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貧しく海賊にならざるを得ないソマリアの事情も描いていて、後半は犯人たち若者の境遇にも同情してしまう。

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これは本物 Richard Phillips さん。彼は「自分をヒーローだとは思っていない」と語る。

 

これは観ないと損な映画ですね。面白くて、感動して、考えさせられます。見逃していたら是非、ご鑑賞下さいませ。

※今年75本目の映画鑑賞

 

ゲゲゲの鬼太郎 第6期

ゲゲゲの鬼太郎が凄いですね。

今日、放映していた「幽霊電車」は原作のあるエピソードで、各シーズンで映像化しているらしいのですが、演出も怖くて、なかなか良いトラウマ回でした。

第7話「幽霊電車」

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パワハラ社長が地獄行きの電車に乗る話。社長は自分が死んでいたことに気が付いていなかった…

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原作の骨壺駅

 

毎回、気合いの入った第6期のゲゲゲの鬼太郎なんだけど、ジプリのオマージュが多い。これは微妙だな…  

第4話「不思議な森の禁忌」

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第6話「厄運のすねこすり」

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誰でも判る元ネタだし…

追加

第8話「驚異!鏡じじいの計略」

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巨神兵かロボット兵

 

勝手にしやがれ

勝手にしやがれ     1959年

ジャン・リュック・ゴダール監督

物語

警官を殺してパリに逃げて来た自動車泥棒のミシェルは、アメリカ人の恋人パトリシアとお互い自由で束縛のない関係を楽しんでいた。そんなある日、彼の元に警察の手が及んでくる。パトリシアはミシェルの愛を確かめる為、彼の居場所を警察に密告、そして彼にも同様に警察が追ってきた事を伝えるが……。

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フランス・ヌーヴェルヴァーグの代表作で、アメリカン・ニューシネマにも影響を与えた名画です。

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でも、あんまり面白くなかったかな…。公開当時にリアルタイムで観たら衝撃的だっただろうとは思うのですが、今、見れば陳腐な感じがしても仕方ない。

アメリカン・ニューシネマもそうだけど、時代性の強い映画は、その時代でないと共感できないものがありますね。

 

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ヒルでクール、個人的な感覚では、ルパン三世の1stシーズンにどこか似た印象があります。時代の影響なんでしょうね。

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ジャン・ポール・ベルモンドが演じるミシェルは自動車泥棒を生業にするチンピラです。

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ジーン・セバーグが演じるパトリシアはアメリカからの留学生で、性に開放的な自立した女性です。

2人は警察に追われ逃げることになります。

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ラストシーンは良かったです。フランス人のダンディズムは、この映画の魅力です。

 

※今年74本目の映画鑑賞

 

 

 

小説 贖罪

贖罪          湊かなえ

物語

15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害された。直前まで一緒に遊んでいた四人の女の子は、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、なぜか顔が思い出せず、事件は迷宮入りとなる。娘を喪った母親は彼女たちに言った―あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい、と。十字架を背負わされたまま成長した四人に降りかかる、悲劇の連鎖の結末は!?

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テレビで「夜行観覧車」とか「Nのために」などドラマを、少しだけ見たことがありますが、小説を読むのは初めてです。

殺人とかドロドロした人間関係とか嫌いなのでミステリーは苦手ですが、まさにそんな感じの小説でした。でも、良く出来ているミステリーです。被害者の友達の紗英、真紀、晶子、由佳それぞれの事件後の物語が繋がっていき、やがて事件の真相が明かされます。

2012年にドラマ化もされているようです。

最近、新潟で小学2年生の女の子が殺害される事件がありましたが、その痛ましさ、近親者の苦痛を思うと、事件の早期解決を願わずにはいられません。被害者のご冥福を祈ります。

殺人事件は小説の中だけで十分です。

※今年4冊目の小説。

 

 

 

晩春

晩春            1949年

小津安二郎監督

物語

妻を無くし、たった二人で暮らす父と娘の親子の物語。父を気遣い結婚しない娘に、父は結婚を勧める。

原節子が出演した「晩春」、『麦秋』、『東京物語」は、原節子が演じる女性の名前がいずれも紀子で、紀子三部作と言われる。本作「晩春」はその第一作にあたる。

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小津安二郎の映画鑑賞二作目。「東京物語」と似たような感想だが、淡々としながら詩情豊かな作品だ。

小津安二郎の映画って、情にもろい日本人の感性のツボを突いていて、一人娘を嫁に出す父親の気持ちを描いた「晩春」は、日本人の情緒のど真ん中という感じでした。

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ローアングルの固定カメラの撮影も日本的に思えた。フレームを固定することで生まれる静かな趣は、枯山水のような美学だ。

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映画のテンポとか、間も日本的です。ハリウッド映画には「出だし5分で最初の事件らしいものが起きて、30分以内にターニングポイントがあって」というようなヒット公式があるらしいが、小津映画では事件らしい事件はなかなか起きません。起承転結ではなく、能の序破急のような語り口です。

アクションは少なく、登場人物の会話でリズムを作っていて、間が、あだち充の漫画に似ている気がした。両者に共通する間とか余韻って、日本人らしいセンスだと思う。

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この映画で、小津・原節子コンビが生まれた。黒澤・三船コンビと同じく、両者の良いところが引き出されています。原節子の官能的とも言える美しさに、小津監督の原節子に対する愛情を感じます。映画撮るの楽しかっただろうな。

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原節子さんは黒澤明監督の映画にも出演していますが、比較すると、黒澤さんは、強い女性が好きみたいで、女性を「美しく」描くのは苦手なんだな、と感じた。

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「我が青春に悔いなし」八木原幸枝 役

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「白痴」那須妙子 役

やはり小津安二郎は日本が誇る映画監督だ。だんだん好きになってきました。

※今年73本目の映画鑑賞