金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

わが青春に悔いなし

わが青春に悔いなし         1946年

黒澤明監督

物語

満州事変以後、軍国主義をひた走る日本では思想統一政策がなされ、自由主義思想や左翼思想の持ち主は弾圧されていった。そんななか、京都の八木原教授の娘・幸江(原節子)は左翼運動家の野毛と結婚するが、やがて野毛はスパイとして逮捕され、獄死してしまう…。  

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GHQの民主主義映画として推奨製作されたもので、プロパガンダ色は否めないのだが、左翼活動家の野毛(藤田進)は主人公ではなく、野毛の理想を追求し信念を持った生き方に惹かれた幸枝(原節子)が主人公だ。

前半は、幸枝と野毛、同期の糸川(河野秋武)との三角関係を描いた青春映画的な雰囲気で進む。

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一度は別々の人生を歩むかに見えた野毛と幸枝だが、東京で再開して、一緒に生活するようになる。つかの間の幸せは、野毛がスパイ容疑で逮捕される終わる。野毛は裁判を受けることなく獄死する。

 

後半は、野毛の精神を継いだ幸枝の闘いが描かれる。幸枝は遺骨を田舎の両親に届けるため野毛の実家に行き、そこで野毛の嫁として両親と生活することを決意する。野毛の実家は、息子がスパイとして捕まった為、村人から差別されていて、幸枝は村人からな差別・迫害に立ち向かうことになる。

原節子が鍬を持ち田畑を耕す姿は鬼気迫るものがあり、映像も黒澤映画らしい迫力。

Wikiからの引用だが、「本作と同時期に同じ題材の映画「命ある限り」(楠田清監督)が企画されていたため、「新人監督をつぶすつもりか」との労働組合の圧力を受けて、黒澤の意図に反して映画後半の展開を大幅に変更せざるをえなかった。農村シーンに込められた異様な気迫は、この圧力に対する反感があったからと黒澤は述懐している。」

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前半と後半で、全く異なるイメージの幸枝。これを演じきる原節子さんは、凄い女優さんだなと思った。

今年22本目の映画鑑賞