金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

世界の黒澤監督 どですかでん

どですかでん          1970年
物語
電車馬鹿と呼ばれている六ちゃん。彼は、いつも空想の路面電車を運転している。どですかでんどですかでん、と言いながら。彼が空想の路面電車を走らせる街。そこは貧乏人たちが住みついたスラムのような街だ。そこに住む人たちは、今日も端から見れば奇妙な、そして本人たちにとっては真剣な生活の営みを続けて行く。

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黒澤監督、初のカラー作品。黒澤個人の邸宅を抵当に入れて資金を確保して製作するが、商業的には失敗となる。1971年12月 黒澤監督は自殺未遂事件を起こしている。

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評判が悪い作品ということで、逆に興味があったのだが、観たら、それほど悪い映画ではなかった。
オムニバスというか、パッチワークのようにスラムに住む人たちの生活を描く技法は芸術的だし、それぞれのエピソードが印象に残る。特に、家の建築を夢想する親子の話は泣ける。

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やりきれない不幸な話、どうしょうもない人ばかりだが、そんな人間を肯定的に描いているのが、しみじみと伝わる。

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冒頭に出てくる家は、教会をイメージさせる。電車馬鹿の六ちゃんは、物語の節目ごとに、どですかでんどですかでん、と出てくるが、彼は不幸や悲しみ、救われない魂を天国へ連れて行く電車を運転しているのだろう。

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この作品が発表された1971年は高度成長の時代で、作品に描かれているような貧しさは、共感を得なかったのではないだろいか。加えて、黒澤監督と言えば、「七人の侍」や「用心棒」のような痛快なアクション映画を期待するのが当然で、この映画が売れなかったのは無理がないことだと思う。力作なだけに不幸な作品だと思う。

※今年41本目の映画鑑賞。