金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

野火

野火                1959年

市川崑監督  

太平洋戦争末期のフィリピン、レイテ島。上陸してきた米軍に包囲され、食料も尽き兵站も崩壊した日本軍は各個が散り散りに絶望的な抵抗を続けていた。

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食べるものが無く、やがて人肉も口にする悲惨な戦場の話です。

主演の船越英二が極限に追い込まれた兵士を演じるため絶食して撮影に臨んでおり、まさに鬼気迫る演技を見せている。

市川崑監督はカラー映画でも撮れたが、残酷さを抑えるために敢えて白黒で撮影したそうだ。

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2014年に塚本晋也監督が「野火」を映画化している。塚本版は見ていないがリアルな映像で話題になった。

市川崑版は映像としてのリアリティは控え目だが、まだ戦争の記憶が生々しい1959年に撮られれており、監督や出演者の戦争に対する怒りやメッセージは原体験を有する本物。年々風化していく戦争の記憶を残す貴重なフィルムだ。

※今年150本目の映画観賞。