風の中の牝雞 1948年
小津安二郎監督
物語
戦争が終わり、困窮した生活の中で夫の復員を待ちわびる妻が、子供の病気の治療費のために一度だけ売春をしてしまう。まもなく夫が帰還する。妻は良心の呵責に苦しみ、ついに真相を夫に告白してしまう…
小津安二郎の戦後2作目の作品。終戦直後の過酷な現実が描かれており、夫に突き飛ばされた妻が階段から転げ落ちていくという、小津映画では通常ない暴力的なシーンがある異色作品。
時子が住んでいるのは、ガスタンクの側の木造家屋。戦後の復興と取り残された庶民生活を象徴しているように感じました。
夫・修一(佐野周二)と妻・時子(田中絹代)修一は妻の告白に苦悩します。修羅場っすね。
笠智衆(若い!)は修一の友人役です。苦悩する修一に妻を許すよう諭します。
修一は真相を確かめようと妻が売春した宿に行きます。そこで紹介された女性から、売春で生計を立てるしかない社会の現実を直視させられます。(余談ですが、ロケ地は勝鬨橋を背景にした月島辺り。当時は何も無かったのですね。)
これが問題のDVシーンですね。頭では妻を許しながら、わだかまりが解けない修一は諍いの中で妻を階段から突き飛ばしてしまいます。
階段を転げ落ちる妻を見て我に返ったのか(気が晴れたのか)、妻を許して夫婦として再出発することを誓うのでした。
この作品、一般に失敗作と見なされ、小津自身も失敗作と認めている。確かに売春する少女に説教するシーンは薄ら寒いし、最大の見せ場が田中絹代の階段落ちでは褒めにくいが、メッセージは解りやすく、案外、面白い。レアな小津作品として楽しめました。
※今年14本目の映画鑑賞。