金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

ブロードウェイの天使

ブロードウェイの天使 /  デイモン・ラニアン

新潮文庫

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フランク・キャプラ監督の「一日だけの淑女」を観た時、何故、老女アニーの娘がスペインにいて離れ離れの生活をしているのか、たいした仕送りも出来ないのに金持ちと偽り続けることが出来たのか、色々、疑問が残り、原作小説を読んでみました。

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一日だけの淑女」の原作は、本書に収められている12編の作品の一つ「マダム・ラ・ギンプ」です。

アニーは、原作では名前は明らかでないのですが、50才前後の年増女で片足が悪く足を引きずっていることからマダム・ギンプ(引きずり) と呼ばれています。

マダム・ギンプは、街頭で新聞や花を売って生活していますが、いつも酔っ払っていて、古新聞や葬儀場で手に入れた花を売ったするような女として描かれています。彼女は、若い時はスペイン舞踏の名手でブロードウェイで知られたダンサーだったが足を怪我して踊れなくなり、おまけに恋に破れて、酒浸りの女になったそうです。赤ん坊はブロードウェイ暮らしでは育てられないと思いスペインに住む妹に育ててもらっていて、映画と同様にホテルの便箋を使って、ホテル暮らしの贅沢な生活しているとか、金持ちの夫がいるとか嘘を書いて送ってました。

小説で面白いのは、金持ちの母親が何年も娘と別居しているなんて不自然なことを格式あるスペインの貴族が信じ込んだのは、スペインの田舎貴族が世間を知らないのと、マダム・ギンプが「自分の娘をあらゆる点で立派なスペイン人として育てたいから、分別のつく年頃までスペインに置いておきたい」と言い訳していて、これがスペインの貴族の心にジーンときたと説明されています。

映画のアップル・アニーは娘の幸せだけを願い暮らす母のように描かれていましたが、小説では飲んだくれのイカサマ女として描かれていて、映画のような善人ではないのがミソでした。

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ブロードウェイの天使 /  デイモン・ラニアン

新潮文庫

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主人公は、ギャング、ギャンブラー、競馬の予想屋など。ブロードウェイ界隈に巣食う老若男女の珍妙なる物語。

〈収録作品〉

紳士のみなさん、陛下に乾杯
プリンセス・オハラ
片目のジャニー
レモン・ドロップ・キッド
ブロードウェイの出来事
マダム・ラ・ギンプ
リリアン
ミス・サラ・ブラウンのロマンス
血圧
ブロードウェイの天使
世界一のお尋ね者
ブッチの子守唄

ー 感想 ー

70編あるラニアンのブロードウェイ物から選ばれた12編で収録作品が全て秀逸。笑いあり、涙ありで、楽しめました。短編ですがアイデアが素晴らしくて、マダム・ラ・ギンプだけでなく、ブロードウェイの天使、ミス・サラ・ブラウンのロマンス、レモン・ドロップ・キッドなど、多くの作品が映画化されています。

本書、絶版になっていて、図書館から借りて読んだのですが、これは是非、復刊して欲しいな。

※今年読んだ小説 1冊目