物語
豊かな自然にあふれたシチリアの町バーリアで、たくましく生きる牛飼いの一家。次男のペッピーノは、幼い頃から大人たちに交じって働き、学校に行く暇もなかったが、毎日が冒険だった。 やがて時代は第二次世界大戦に突入し、ペッピーノはそのつぶらな瞳で、激変する時代を見つめる。戦争は終わり、成長したペッピーノは、今度は自らの激動の人生へと分け入っていく。
トルナトーレ監督の故郷であるシチリアのバゲリーア(現地の方言で「バーリア」)を舞台にした作品。物語には監督自身、そして監督の父親の自伝的要素も盛り込まれている。
ペッピーノは戦後まもなく共産党に入党し貧困に苦しむ小作人のため農地改革運動などに参加します。やがてペッピーノは議員に立候補しますが、党勢の衰えから選挙で敗退します。一方、私生活では親の反対を押し切って結婚したマンニーナとの間に、5人の子供に恵まれます。その1人ピエトロはトルナトーレ監督自身をモデルにしています。
貧しいが豊かな自然に囲まれたシチリア。埃っぽい田舎町バーリア。そこに住む粗野だが人間味あふれる人々。ペッピーノの素朴ながら情熱的な人柄はこんな風土に育まれたのかもしれません。丘から見下ろすバーリアには、天地の悠と人生の短さを感じさせます。
ネットでは「ニュー・シネマ・パラダイス」と比較して、いまいち、とか、がっかりしたというレビューが多い。
シチリアを舞台にして、二つの作品の世界観には多くの共通点があるが「ニュー・シネマ・パラダイス」が叙情的なヒューマンドラマ(メロドラマ)なのに対して、「シチリア!シチリア!」はペッピーノ家やシチリアの歴史を叙事詩的に描いた作品で、「ニュー・シネマ・パラダイス」とは違うタイプの映画だ。
がっかりレビューは、うどんを食べようとしたら、蕎麦が出てきたみたいなもんだろう。
先入観を持たないで観ると、壮大なスケールと圧倒的な映像美で描かれた「シチリア!シチリア!」は素晴らしい。僕は、少数派かもしれないが、「ニュー・シネマ・パラダイス」より本作の方が好きだな。
※今年29本目の映画鑑賞