金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

捜索者

捜索者                         1956年

ジョン・フォード監督

物語

コマンチ族に弟一家を殺され、二人の姪をさらわれた男イーサン。以来、彼はコマンチ族に対して憎悪を燃やす復讐鬼となった。そして、さらわれた姪たちを求めて、彼は何年も捜索を続けていたのだった。だがやっと探し当てた姪のデビーは、インディアンの言葉を操り、イーサンから逃れようとする。コマンチ族となってしまったデビーに、イーサンは銃を向けるが… f:id:tomo2200:20190411001859j:image

ジョン・フォード監督とジョン・ウェインのコンビによる西部劇。ジョン・ウェインが正義のヒーローでなく、復讐に執念を燃やす孤独な男という異色作。

公開当時は不評だったようだが、1960年代にはゴダールらに再評価され、「タクシー・ドライバー」などの作品にも影響を与えた。

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 主人公のイーサンは露骨に人種差別的な人物です。しかし映画自体は差別主義と違うように思います。まずイーサンには西部開拓時代の白人の正義を象徴させながら、彼の異常性を明らかにしています。また、チェロキーの血が混じった相棒のマーチンに人種差別を否定する現代の立場を担わせてポリティカルなバランスを取っているように思います。

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コマンチ族は白人社会から馬や銃を取り入れ勢力を増し、最強のホース・インディアンとし恐れられていたそうです。実際、集落を襲っては男女かまわず皆殺しにし、子供だけは連れさって部族の仲間に加えるようなことをしていたそうです。

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映画のラストで、ジョン・ウェインは去っていきます。家の中から撮った後ろ姿のシルエットに物悲しさと孤独を感じます。

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終焉期の西部劇。西部劇としては暗くスッキリしないが、アメリカン・ニューシネマの一作品として観たら確かに名作。

ベトナム戦争以前にアメリカン・ニューシネマが存在したなんて不思議な気もしますが、アメリカの白人至上主義的な正義の矛盾が西部開拓時代から存在していて、ベトナム戦争と同じように、インディアンとの争いをリアルに描いた結果として、そんな共通点が浮き上がったのではないでしょうか。

※今年66本目の映画鑑賞