お嬢さん乾杯! 1949年
木下惠介監督
物語
自動車修理工場を経営する青年・圭三のもとに、元華族の令嬢・泰子との縁談が持ち込まれた。圭三は初めは乗り気でなかったが、お見合いで泰子と会ってみると彼女を気に入ってしまう。結婚の承諾を受けた圭三は、ある日に池田家を訪問するが、そこで泰子の父が詐欺事件の巻き添えで刑務所に入っていることと、池田家が抵当に入っていることを知る。
お嬢さん乾杯!は没落華族の娘と新興成金の男という住む世界が異なる男女のラブ・ロマンスを描いたスクリューボール・コメディです。
戦後の激しい変化の中で没落した人々を指して、”斜陽族"という言葉が当時流行しましたが、そんな時事的な話題を巧みに取り入れています。
初めてのデートがいいですね。泰子の趣味に合わせて、バレエ「白鳥の湖」を鑑賞すると、圭三は初めて観るバレエに「なぜだか知らないけど、ほろほろ涙が出て困っちゃった」と可愛らしい。その後、佐野の趣味に拳闘を観戦しにいくことにするのだが、初めて観る殴り合いに、泰子も思わず熱くなる。ちぐはぐな二人がユーモラスに描かれている。
原節子の美しさにハッとさせられました。小津安二郎や成瀬巳喜男の作品に出てくる原節子も美しいのですが、木下惠介の撮り方が上手いのだと思います。ヨーロッパの映画を見ているような雰囲気。「和製グレタ・ガルボ」なんて呼び名も納得です。
佐野周二の演技もイイ。粗野だが実直な圭三の気持ちが伝わる。コメディもできる俳優さんだったのですね。
洗練されたコメディです。1949年、戦後まもない時代の作品だと思うと驚きです。
※今年99本目の映画鑑賞