終着駅 1953年
ヴィットリオ・デ・シーカ監督
物語
米国人の若い人妻メアリーは断ち切り難い想いを残してローマの中央駅にやって来た。彼女は妹の家に身を寄せて数日間ローマ見物をしたのだが、その間に米伊混血の青年ジョヴァンニと知り合い愛し合う仲になってしまったのだ。
ジョヴァンニとの生活に後ろ髪を引かれながらも、夫や子どもの元へ帰ることを決意するメアリー、午後7時出発の列車の席をとった彼女のもとへ、発車直前、出発のことを聞いたジョヴァンニが駆けつける。
米伊合作映画。監督は「自転車泥棒」などで知られる名匠ヴィットリオ・デ・シーカ。主演はジェニファー・ジョーンズ、モンゴメリー・クリフト。
タイトルがいいですね。「終着駅」という言葉にある「最果て感」。ドラマも不倫カップルの別れを描いたものでピッタリです。一説には「終着駅」という言葉は、この映画から生まれたとも。
映画の見どころは、ずばり駅を舞台にした男女の切ない別れ。サスペンスドラマで犯人を追い詰めて説得する場所が、海に突き出た断崖の
ごとく、舞台がストーリーを盛り上げます。
あとは、ジェニファー・ジョーンズの不倫妻の演技。大人の色気、魔性の香りがします。
淀川長治さんの解説では、この映画はジェニファー・ジョーンズが妻のあるハリウッドの名プロデューサーのデヴィッド・O・セルズニックに言い寄って、自分を主演にした名作を作ってくれとねだって作られたものらしい…
で、映画は見事にヒットして、ジェニファー・ジョーンズが一躍有名になるのですが、リアルでも魔性の女みたいですね。
しょーもないメロドラマですが、魅せます。男女の別れの葛藤だけを描いて、夫や子どもを忘れるほどの激しい愛欲の日々は観客の想像にお任せ。ああ、”見せないテクニック”ですね。妄想を掻き立てられます。
※今年の2本目の映画鑑賞。