ウンベルト・D 1952年
物語
ローマに暮らす元公務員のウンベルトは愛犬フライクとアパートで暮らしていたが、年金での生活は苦しく、家賃の滞納を理由に20年住んでいるアパートの立ち退きを迫られていた。物を売るなどして部屋代を工面していたが、万策尽きてとうとう出る決意をする・・・
興行的には振るわなかったが、評価は高く、米タイム誌のオールタイムベスト100にも選ばれた。デ・シーカ監督本人のお気に入りでもある。
戦後のイタリア。年金がインフレによって目減りし困窮する老紳士を描いた作品。
自転車泥棒、ひまわり、終着駅、とヴィットリオ・デ・シーカの作品を見てきて思うのですが、この監督は泣かせるのが上手い。主人公ののやるせない気持ちが切々と伝わってきます。ネオ・レアリズモの定評もありますが、人物描写の巧さが本領ですね。
孤独な老人ウンベルトが心を通わせるのは、愛犬フライクと家主のメイドのマリアだけ。
マリアは、二人の軍人と付き合って親が判然としない子を身ごもっている。妊娠が家主にバレれば、住み込みのメイドの仕事を失うことになるので希望のある生活ではない。
愛犬フライクはウンベルトの家族とも言うべき存在。ウンベルト自身も社会から見放された捨て犬のような立場で、次第にウンベルトとフライクが重なって見えてくる。
このワンちゃん、なかなかの役者。動物とは思えない演技力でした。
ラストシーンはいいね。先に続く人生を感じさせる。暗い映画だけど希望を感じさせます。一度観たら忘れられない名画ですね。👏
※今年、4本目の映画鑑賞。