キューポラのある街 1962年
浦山桐郎監督
物語
中学3年の石黒ジュンは、鋳物工場の直立炉キューポラが立ち並ぶ埼玉県川口市の鋳物職人の長女。何事にも前向きで、高校進学を目指すジュンだが、父・辰五郎が工場を解雇されたため家計は苦しく、修学旅行に行くことも諦めていた…
早船ちよの小説が原作。「キューポラ」は、鋳物を造るために鉄を溶かす小型溶銑炉のことです。思春期の少女ジュンが、父の解雇に始まり、貧困、進学、組合、差別など、さまざまな社会問題に直面する社会派青春映画。
1962年、戦後から高度成長に向かい発展していく日本。産業のオートメ化が進み、ジュンの父の辰五郎は、近代化に遅れ経営不振となった鋳物工場をリストラされる。。
辰五郎は叩き上げの鋳物職人で、組合をアカと呼んで組合からの援助を断りますが、収入を断たれて生計が立たない状況になります。
長女のジュンは高校進学の夢を持っていますが、経済的な不安が影を落とします。ジュンはアルバイトをしながら勉強を続けます。
戦前生まれの両親に対して、戦後世代の若者の夢や希望を爽やかに描いた作品です。吉永小百合さん(当時18才)の演技が素晴らしかった。
映画では朝鮮人家族との交流も描かれています。祖国建設の希望を抱いて北朝鮮へ帰る家族。(その後の歴史を知っているので気の毒ですが)当時の状況が伝わります。
久しぶりの映画鑑賞。時代を捉えたいい映画でした。どっかのレビューでこの映画を共産思想のプロパガンダ映画と評していましたが、映画を見る目がないね。日本映画史に残る名作です。
※今年33本目の映画鑑賞。