金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

ショーシャンクの空に

ショーシャンクの空に                  1994年      

フランク・ダラボン監督

物語
妻とその愛人を射殺したかどでショーシャンク刑務所送りとなった銀行家アンディ。初めは戸惑っていたが、やがて彼は自ら持つ不思議な魅力ですさんだ受刑者達の心を掴んでゆく。そして20年の歳月が流れた時、彼は冤罪を晴らす重要な証拠をつかむのだが…

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スティーブン・キングの「中編小説『刑務所のリタ・ヘイワース」が原作。第67回アカデミー賞で7部門にノミネートされた。主演、ティム・ロビンスモーガン・フリーマン

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公開から20年以上経っていますが、今でもファンの多い映画です。僕は今回15年ぶりの再鑑賞になります。初めて観た時の驚きはありませんが、ストーリーテーリングが上手くて、再鑑賞でも飽きません。

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主人公のティム・ロビンスの演技も良かったですが、モーガン・フリーマンの存在感は抜群です。原作のレッドはアイルランド人だそうですが、映画の黒人の設定の方が相棒(バディ)感があっていいですね。

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ブルックスやトミーなど脇役も良かったですね。仮釈放後に自殺してしまうブルックスのエピソードは終身刑の残酷な一面について考えさせられます。

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刑務所という絶望的なシチュエーションの中でも、人間性や希望を捨てなかったアンディ。劇中、囚人にとっての刑務所の壁は、誰にとっても存在する人生の壁を比喩しているような気がします。素晴らしい脚本、いい映画ですね。

※今年42本目の映画鑑賞。

 

地獄

地獄                                  1960年

中川 信夫 監督

物語

宗教を専攻する大学生・清水四郎は成績優秀で周囲の評判も良く、恩師である矢島教授の愛娘・幸子と婚約して幸せの真っただ中にあった。そんな彼にしつこく付きまとうのが、四郎とは正反対に邪悪な同学年の友人・田村だ。ある日、四郎は田村の運転する車に乗っていたところ、酒に酔ったヤクザの男を轢き殺してしまう。これを機に彼の運命は一気に暗転していくのだった…

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中川信夫監督は「東海道四谷怪談」や本作「地獄」などの作品で知られ、和製ホラー映画の巨匠と言われている。(そうです。)

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前半が面白い、どこからともなく現れる悪魔的な友人・田村。登場人物が不道徳で業深い人ばかり。登場人物が次から次へと亡くなっていく(無理矢理感は笑う)展開の異様さがシュールで秀逸。

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死後の世界で再会する四郎と幸子。四郎は生前に幸子が赤ん坊を身篭っていたことを初めて知り、地獄に落ちた赤ん坊を救うとする…。地獄にもロマンスあり、冒険あり。

地獄の描写はグロが入っていますが、解説っぽいナレーションが入って、なんか怪しい宗教団体の映画みたいな感じもしました、^^; 。

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夏に怪談を聞いてゾッとするのが日本の慣わしで、昔はテレビなども夏に心霊特集をよく放映していたものです。僕はホラー系は苦手なのですが、本作の恐怖演出は懐かしい感じがしました。

※今年41本目の映画鑑賞。

 

銀座二十四帖

銀座二十四帖               1955年

川島雄三 監督

物語

思い出の画家を見つけ出すため、銀座の画廊に自分の少女時代の肖像画を陳列した人妻の和歌子。偽者ばかりがやってくるなか、銀座の顔役で花屋を経営しているコニーが協力して…

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週間朝日連載の井上友一郎の小説を川島雄三監督が映画化。助監督に今村昌平。主演は三橋達也月丘夢路北原三枝ら。

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文芸ものかと期待させるが、肖像画に書かれたG.Mのイニシャルの男を探すミステリー小説の展開。少し残念。しかし銀座や当時の風俗を鮮やかに映し出していて素晴らしい。惹きつけられます。

この映画が公開された頃、日本は神武景気の真っ只中。戦後10年、復興を果たした日本社会の自信や明るい雰囲気が伝わってきます。

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三橋達也が演じるコニー。銀座を愛し、街に汚すポン(覚せい剤)の蔓延を憎む正義漢。ファッションもモダン。

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ヒロインの月丘夢路と、姪役の北原三枝。月岡夢路は着物姿が似合う艶っぽい女性。北原三枝アプレゲール(戦後派)というところ。

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少女時代の浅丘ルリ子さん。デビューしたての頃です。

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映画の中でも銀座を描く画家が登場しますが、この映画は当時の銀座や風俗を見事にスケッチしていますね。川島雄三監督はやはり巨匠だと思いました。

※今年40本目の映画鑑賞。

ロープ

ロープ                                  1948年

アルフレッド・ヒッチコック監督

物語

舞台はマンハッタンにある、とあるアパートの一室。完全犯罪を完結させることにより、自分たちの優位を示すために殺人を犯したフィリップとブランドン。彼らは、殺人を犯した部屋に人を呼んでパーティを開く、というスリルを楽しみさえするが……

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パトリック・ハミルトンの舞台劇の映画化。ヒチコック監督初のカラー作品。主演はジェームズ・スチュワート

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フィリップとブランドン。ニーチェの超人思想の信奉者で、完全犯罪を遂行することで自分たちの優越性を立証できると考えている。この二人は1924年に実際に起きた少年の誘拐殺人事件・「レオポルドとローブ事件」を元にしている。

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被害者の両親や恋人を招待し、殺人を犯した部屋でパーティを開催する。死体を隠したチェストの上に料理を出したり、殺人に使ったロープで本を縛って両親に渡すなどして、優越感に浸る犯人。

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パーティに呼ばれた教師ルパートは部屋で被害者デイビッドの帽子を見つけ、二人の行動の異常さから、行方不明になったデイビッドが二人に殺されたのではないかと疑い始める。

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この映画でヒチコックは長回しで全編をワンカットに編集という実験的な試みをしています。舞台劇の良さと映画の良さがミックスされたような感じでしょうか。スリル感があります。

※今年39本目の映画鑑賞。

ピグマリオン

ピグマリオン                          1938年

アンソニー・アスキスレスリー・ハワード監督

物語

音声学の教授であるヘンリー・ヒギンズが、強いコックニー訛りを話す花売り娘イライザ・ドゥーリトルを訓練し、大使のガーデン・パーティで公爵夫人として通用するような上品な振る舞いを身につけさせることができるかどうかについて賭けをする。ヒギンズはこのために最も重要なことは、イライザが完璧な話し方を身につけることであると考えてこれを教授するのだが…

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ジョージ・バーナード・ショーの戯曲をショー自らの脚色で映画化した作品である。ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の原作にもなっています。

タイトルの「ピグマリオン」は、ギリシア神話に登場するキプロス島の王の名前で、彼は自らが彫刻した女性の彫像ガラテアを愛してしまったそうです。ヒギンズ教授を神話のピグマリオンを重ねています。

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映画を観て改めて思ったのはイギリスは階級社会なのですね。最下層の女性が上流階級のレディに変身するのは、階級社会に対する皮肉も入っています。差別を笑いにした作品です。

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マイ・フェア・レディ」とストーリーは同じですが、オードリーを主役にした「マイ・フェア・レディ」に比べて、主役のバランスはヒギンズ教授より。ドラマを楽しむなら「ピグマリオン」の方がお勧めですね。

※今年39本目の映画鑑賞。

 

大きな鳥と小さな鳥

大きな鳥と小さな鳥                1966年

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督

物語

父親のトトと息子のニネットは街へ行くため郊外の道を歩いていた。 途中、不思議なカラスが二人を呼びとめ、そのまま合流する。 おしゃべりだが左翼のインテリでもある彼は、 大昔、聖フランチェスコの使いとして鳥たちに神の福音を伝えた修道士チチッロの話を聞かせる。 なおも歩き続ける二人は様々な出来事に遭遇していき…

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「奇跡の丘」「ソドムの市」の鬼才ピエル・パオロ・パゾリーニが1966年に手がけた作品。主演はイタリアの喜劇俳優トト、ニネット・ダボリ。音楽はエンニオ・モリコーネ

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ローマ郊外を歩く親子トトとニネット。シュールでナンセンスな、ロードムービー風のコメディ。言葉をしゃべる不思議なカラスが現れ、1200年前の修道士のチチッロとニネット(トトとニネット)の話を語る。

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トトという俳優は私も知らなかったがイタリアではチャップリンにも並ぶ喜劇俳優。とぼけた味のある演技が印象的。

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イタリア共産党 トリアッティの葬儀(実写)のシーンもある。映画に寓話的な含意や政治的な風刺がある。

細かなと意味はわからなかったのだが、どこへ向かうかもわからず歩く二人は、混沌とした時代を生きる大衆を描いているのだろう。

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ナンセンスで面白かった。トトと二ネットの親子は、どこかイタリア版、天才バカボンみたいな感じでした。

※今年38本目の映画鑑賞。

 

心の旅路

心の旅路                        1942年

マービン・ルロイ監督

物語

第一次大戦の後遺症で記憶喪失になった男は踊り子ポーラに助けられる。二人は愛し合い結婚。出先のリバプールで交通事故に遭った彼は昔の記憶を取り戻すが、ポーラと暮らした日々を忘れてしまう。実業家となった彼を見つけたポーラは秘書として近づき、真実を伝えようか迷うが...

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原作は「失われた地平線」、「チップス先生さようなら」などのジェームズ・ヒルトン作の小説。

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記憶を喪失した男とのラブロマンス。記憶喪失を題材にした映画はたくさんありそうだが、これがオリジナルかな。

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秘書として実業家チャールズ・レイニア(スミス)に近づくポーラ。しかしスミスはポーラを見ても何の感情も示さない。彼女は悲しみに打ちひしがれるが、いつか記憶を取り戻すことを信じて秘書業務に励む。

そしてスミスは国会議員になる。社会的な体裁のためにポーラに形式上の夫婦になって欲しいと頼む。残酷な申し出にポーラは深く傷つくのだった。

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ある事をきっかけに記憶を喪失していた頃を次第に思い出す。スミスは断片的な記憶をたぐりながら遂にポーラと暮らした家に着く。

ラストシーンがいいんだな。心に残る名画。感動しました。👏

※今年37本目の映画鑑賞。