金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

近頃なぜかチャールストン

近頃なぜかチャールストン  1981年

岡本喜八監督

物語

非行少年・次郎は婦女暴行未遂で入れられた留置所で、ヤマタイ国閣僚と名乗る謎の老人たちと出会う。彼らは現代政府を見かねて組織を形成していた。釈放後、次郎の父・宗親の古い家をねぐらにしていた老人たちに対し、次郎の母親が彼らに立ち退きを迫り、次郎は老人たちと共闘することに・・・。

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「日本のいちばん長い日」や「独立愚連隊」などで知られる岡田喜八監督の1981年の作品。政治風刺の効いたドタバタ喜劇。

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岡本喜八監督が、本作の製作動機を「近頃なにやらキナ臭くなったので」と語っていますが、1980年代、戦前戦中派が現役から引退して戦争体験が風化していく様子や、経済的な発展の中で薄れる政治意識など、当時の世相を風刺しているようですね。

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なんとなく(クリスタル)、なぜか(チャールストン)、理由も目的も無いのが、この時代の雰囲気でした。熱血が時代遅れになりクールな若者が増えてきたのですが、当時は「しらけ世代」とも呼ばれていました。

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ナンセンスな内容でしたが、軽妙なテンポで面白かった。この作品好きです。😊

小沢栄太郎とか田中邦衛やら財津一郎とか、今では懐かしい俳優ばかり。作品げ時代の雰囲気を映し出しています。公開時より、むしろ今観る方が新鮮な感じで、時が経つにつれ輝きを増す作品でないでしょうか。

※今年61本目の映画鑑賞。

最高の人生の見つけ方

最高の人生の見つけ方    2019年

犬童一心監督

物語

人生のほとんどを家庭のために捧げてきた主婦・幸枝と、仕事だけに生きてきた大金持ちの女社長・マ子。余命宣告を受けた2人は病院で偶然に出会う。初めて人生に空しさを感じていた彼女たちがたまたま手にしたのは、入院中の少女が書いた「死ぬまでにやりたいことリスト」だった。幸枝とマ子は、残された時間をこのリストに書かれたすべてを実行することを決断をした…

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ジャック・ニコルソンモーガン・フリーマンが共演した同名映画を原案に、吉永小百合天海祐希が共演したハートフルドラマ。

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オリジナル版から、舞台を日本に変え、キャストも女性にするなど、いろいろ脚本が工夫されていて、オリジナル版を観た人でも、別の物語として楽しめます。目玉は、やはり、吉永小百合天海祐希のキャスティングですね。二人は20歳も離れていますが仲がいいようです。撮影を楽しんでいる雰囲気が伝わってきて、いい感じです。

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ももクロのライブが圧巻でした…。実際のライブでサプライズ撮影を行ったようですが、映画的にもライブ感があって良かった。

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ストーリーで違和感を感じたのは、「棺おけリスト」が幸枝・マ子が書いたものではなくて、入院中の少女が書いたものということ。なぜ他人のリストを実行するのか??? 

70歳のおばさんが死ぬ前に「スカイダイビングをしたい」とか思わないからか…😅 

※今年60本目の映画鑑賞。

丹下左膳餘話 百萬両の壺

丹下左膳餘話 百萬両の壺   1935年

山中貞雄監督

問題

伊賀の柳生家では、有事に備え百万両を密かに持っていた。その隠し場所を記した地図をコケ猿の壺に入れていた。柳生家の当主は、そうとは知らず、たいそう貧相なコケ猿の壺を弟の婿入り道具にする。これにへそを曲げた弟は、これまたそうとは知らずクズ屋に払い下げてしまい・・・のんきな左膳とお藤がひょんなことから育てることになった、チョビ安が金魚入れにしていつも持ち歩いている壺が実は、百萬両の謎を秘めたそれであった。

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28歳の若さで亡くなった昭和初期の名匠・山中貞雄の代表作として知られ、大河内傳次郎扮する浪人・丹下左膳を主人公に描いた傑作時代劇。

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丹下左膳というキャラクターは主君に裏切られ右目と右腕を失ったことから、武士の生き方に不信感を持つニヒルな剣士で、今でいう、アンチヒーローです。

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本作は、原作のイメージとは異なるホームコメディ調で制作されたことから、原作者から苦情がつき、後でタイトルに余話とつけたそうです。

戦前というと軍国主義の暗いイメージが強いのですが、明るく楽しい本作を観ると、戦前と戦後の文化に大正デモクラシーからの連続性があったことを感じます。

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映画で、役者の着こなしや所作が自然な感じがしました。戦前には、まだ江戸時代の風情や記憶が残っていたのかと思います。さりげなく口調や振る舞いにリアリティがあります。

着こなしについていうと、そもそも身長から違うのですね。大河内 傳次郎は160cm。小柄な日本人だから着流しが似合うのだと思います。

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2004年リメイク版で左膳を演じた豊川悦司は186cm。スラっとして外国人が和服を着ているみたいですね…。

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監督の山中貞夫さんは日中戦争に召集されて28才の若さで戦病死しました。全24本の作品のうち、ほぼ完全な形で残されたのは『丹下左膳余話 百萬両の壺』『河内山宗俊』『人情紙風船』の3本だけだそうです。戦禍で失われた才能や貴重な文化遺産が惜しまれます。

本作、貴重な作品を観れて良かったです。

※今年59本目の映画鑑賞。

フラガール

フラガール     2006年

李相日 監督

物語

昭和40年代初頭に福島県いわき市の町興しとして作られた“常磐ハワイアンセンター”の誕生秘話を映画化した感動コメディ。石炭から石油へとパワーシフトがされる中、いわき市の炭坑も次々と閉山。そこで市民たちは、町興しとして“常磐ハワイアンセンター”の建設を計画。施設の目玉として、フラダンスショーを取り入れることになり、東京からはダンス教師を呼び寄せ、町からは踊り子を集めてレッスンを始めようとするが…

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昭和40年代初頭に福島県いわき市の町興しとして作られた“常磐ハワイアンセンター”の誕生秘話を映画化した感動コメディ。「第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞」の他、数多くの映画賞を受賞した。

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松雪泰子さん、蒼井優さん。演技も踊りも素晴らしかった。この映画で日本アカデミー主演女優賞と助演女優賞に輝いています。

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しずちゃん。お笑い役と思ったらドラマ後半では重要な役になっていましたね。ナチュラルな演技が良かったです。

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探鉱娘がフラガールになる、軽いタッチの青春コメディかな…とたかをくくり、スルーしていたのですが間違いでした。フラガールと家族の葛藤や炭鉱町の生活まで感じさせる名画でした。これは見て良かった。👏

※今年58本目の映画鑑賞。

ペコロスの母に会いに行く

ペコロスの母に会いに行く.   2013年

森崎東 監督

物語

長崎で生まれ育った団塊世代のサラリーマン、ゆういち。ちいさな玉ねぎ「ペコロス」のようなハゲ頭を光らせながら、漫画を描いたり、音楽活動をしながら、彼は父さとるの死を契機に認知症を発症した母みつえの面倒を見ていた。迷子になったり、汚れたままの下着をタンスにしまったりするようになった彼女を、ゆういちは断腸の思いで介護施設に預けることに。苦労した少女時代や夫との生活といった過去へと意識がさかのぼっている母の様子を見て、彼の胸にある思いが去来する。

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長崎在住の漫画家・岡野雄一の同名エッセイ漫画を岩松了赤木春恵の主演で映画化したハートフル・ドラマ。

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僕も年老いた母がいて、認知症とか介護とか、映画の中の話ではなくて身近に感じます。

映画は認知症の母との日常だけでなく、母みつえの生い立ち、長崎の原爆のエピソード、結婚生活の苦労などを描いていて、しみじみと母の人生を振り返る息子ペコロスの気持ちも伝わります。

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もう亡くなってしまいましたが、主演の赤木春江さんは「世界最高齢88歳での映画初主演女優」にギネス認定されています。歳をとっても元気で活躍されているお年寄りを見ると元気をもらえそうです。

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涙、笑い、感動、老いや家族について考えさせられる素敵なドラマでした。赤木春恵さんの演技も素晴らしかった。👏 

※今年57本目の映画鑑賞。

漫画 : 極主夫道

極主夫道    おおのこうすけ

物語

ギャグ漫画。かつて「不死身の龍」と呼ばれたヤクザの龍は結婚を機に、働く妻の美久を支える専業主夫として家事をこなす日々を送る。ヤクザ時代と変わらぬ強面や言葉遣いで時折誤解されるも、本人はいたって真面目に専業主夫道を究めていく。

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WEBコミックサイト『くらげバンチ』にて読み切りを2018年2月23日に掲載し、同年5月18日から連載開始。既刊8巻、累計発行部数は400万部を突破。

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2020年10月11日から玉木宏主演でテレビドラマ化。2021年春にはアニメ化され、Netflix独占で全世界配信。めちゃくちゃヒット作、くらげパンチ一の出世作品かな。

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コミック・アプリで、毎日一話づつ読んでいますが、すぐにマンネリで失速するかと思ったらなかなか飽きない。

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漫画の終わり方がいい。シュールなオチがなんとも言えない。13話は秀逸でした。

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30話も良かった。一切セリフ無し…。ペーソスのあるユーモア。

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この漫画読むと「合法レシピ」を思い出します。「極主夫道」は料理縛りがない分、自由に描けている感じがします。

※漫画読書 4作品目。

シャッターアイランド

シャッターアイランド     2010年

マーティン・スコセッシ監督

物語

1954年、連邦保安官テディ・ダニエルズとチャック・オールら捜査部隊は、ボストン港の孤島(シャッターアイランド)にあるアッシュクリフ精神病院を訪れる。この島でレイチェル・ソランドという女性が謎のメッセージを残して行方不明となった。捜査を進めていく中で連邦保安官の2人は、島に謎が多すぎることに不信感を強めていく…。

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ミスティック・リバー」のデニス・ルヘイン原作の同名小説をマーティン・スコセッシ監督&レオナルド・ディカプリオ主演で映画化。

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ミステリー映画なのでネタバレは無しとしますが、ディカプリオの演技も良かったし、スコセッシ監督の演出は素晴らしかった。

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しかし何故、巨匠スコセッシ監督が今さらサスペンス映画を作ったのかの方が気になってしまう。

インタビューで、「まずストーリーが次々と変わっていくところに惹かれた。」「脚本のラストがいいと思った。深い憐れみの情に溢れている。脚本の最後のページでこれをやろうと決断したんだ」」と監督をした理由を語っていました。

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ラストのセリフは原作小説には無いそうだ。このセリフで結末の解釈も変わるのですが、このセリフがあったから監督がサスペンス映画を撮る決意をしたと思うと、なかなか重要なセリフでしたね。

※今年56本目の映画鑑賞。