續 姿三四郎 1945年
黒澤明監督
物語
前作で敗れた檜垣源之助の復讐のため、唐手家の檜垣源三郎、鉄心兄弟が登場する。
前作のヒットで作られた、というより作らされた映画で、黒澤監督自身が上出来でないと述懐しているそうです。
前作は「柔道 vs 柔術 」でした。
今回は「柔道 vs ボクシング」、「 柔道 vs 唐手」と異種格闘技戦です。梶原一騎みたいで面白いのですが、格闘シーンは、今ひとつ迫力がありません。
僕らは、プロレス、カンフー映画、総合格闘技などを見て目が肥えているので、そう見えるのかもしれませんが…。
檜垣源三郎、鉄心兄弟
源之助をして「鉄心は蛇、源三郎は、病気で発作の前にくる凶暴性は手に負えない」と言わせしめる兄弟だか、その執念深さとか凶暴性を描き切れていない。
最後は三四郎の人柄や無防備さに呆れて「負けた、負けた」と潔い。なんだかな〜。
鉄心との果し合い
今回は雪山。でも果し合いの場所として選ぶリアリティがないな。雪山で裸足なのが可哀想。
映画のテーマ
映画が製作されたのは戦争末期、戦況は日々悪化し、物資も窮乏。1944年末には本土への空襲も始まります。そういう状況下で作った映画なのに外国人も普通に登場しており穏やかな感じがしました。
エンタメ色が強く映画のテーマは曖昧ですが、テーマの一つは「掟を破ること」です。三四郎は、道場の掟を破って道場の許可なく挑戦を受けます。掟を破れば道場に破門されますが、和尚に一喝され、悩んだあげく自分の道を選びます。この行動には当時の全体主義に対する批判が隠されているように思います。
もう一つは「敵を許す」ということかと思います。三四郎は、前作の敵である檜垣源之助との和解し友人になっています。また暴言を吐いた柔術家の関根嘉兵衛に自分が勝ち取ったファイトマネーを渡したり、果し合い後に、檜垣兄弟を介抱するなど、敵を許すシーンが多くありました。鬼畜英米などと敵対心を煽る戦時下ですが、敵を許す精神や普遍的なヒューマニズムを表現したかったのだと思います。
※今年14本目の映画観賞