アメリカン・ニューシネマ
ベトナム戦争の時代(1960年代後半から1970年代前半)に作られたハリウッド映画で、反体制的な人物の心情を綴った映画作品群を指す。主人公はアンチヒーローやアウトローなどで、敢然と体制と闘うが、最後には体制に圧殺されるアンハッピーエンドが多い。
代表的な作品には「俺たちに明日はない」「イージーライダー」「明日に向って撃て!」などがあります。
作品は従来のハリウッド映画に対して前衛的であるが、殺伐として退屈な印象もある。
当時の若者たちの、社会に対する憤りとか、時代の閉塞感を共有していないと理解できないものがあります。
そんな時代。
1964年 トンキン湾事件をきっかけにアメリカがベトナム戦争に直接介入。1965年には北爆を開始。
しぶとく抵抗する北ベトナム。アメリカは自軍を投入して3年以上も成果なく死者が増える一方となります。
1968年 解放戦線によるテト攻勢は、それまで戦況の優位を信じていたアメリカ人に衝撃を与えた。テレビや報道写真を通してベトナムの実際を知ることになり、広く政府への不信や反戦機運が一気に噴き出す。
既存の権力に不信感を抱き反発する若者の間では、ドラッグやカウンターカルチャーとしてのヒッピーが流行します。
中国では毛沢東が1966年に、四旧( 旧思想、旧文化、旧風俗、旧習慣 )打破をスローガンに文化大革命運動を推進する。左派知識人の一部はこの運動に期待を寄せた。
1967年キューバ革命の英雄と言われるチェ・ゲバラが、共産革命の拡大を恐れるCIAに捕まりボリビアで処刑される。キューバ革命やチェ・ゲバラに心酔する若者を刺激した。
その頃、日本では日米安保条約の延長を阻止しようと学生運動が盛んになる。海外の共産主義勢力と連携して武力革命を目指す左翼過激派による事件も多発した。
1969年 安田講堂事件
1970年 よど号ハイジャック事件
1972年 あさま山荘事件
いやはや凄い時代だったんですね。アメリカがベトナム撤退を決定した1973年には、世情も落ち着いてきて、アメリカン・ニューシネマのブームも衰退しました。時代が作った芸術だったのです。