静かなる決闘 1949年
物語
野戦病院での手術中に当時不治の病とされた“梅毒”をうつされた青年医師のドラマ。前線の野戦病院で次々と運ばれてくる負傷兵を必死に治療する軍医・藤崎。彼はふとした不注意から手術中に小指にキズをつくってしまい、そこから梅毒に感染してしまう。復員後、藤崎は恋人の美佐緒にも病気を隠し続け、次第に彼女を避けるようになるのだった……。
菊田一夫の戯曲「堕胎医」を原作とした映画で梅毒に冒された医師の苦悩を描いた作品ですが、1928年に開発されたペニシリンは1942年には実用化されていて、映画が公開された1949年では治る病気になっています。原作や当初脚本では藤崎が発狂して終わる内容だったが、GHQから病気に対して間違った偏見を生まないよう修正の指導があったようです。
作品設定と医学史的事実に乖離が生じてしまっていますが、それはドラマの本質ではないこと。無視して鑑賞。
「酔いどれ天使」でデビューした三船敏朗の二作目の出演作になります。ヤクザから青年医師へと役が変わりますが、野戦病院での手術シーンなどワイルドな魅力に溢れています。
婚約者の美沙緒(三條 美紀)を巻き添えにしたくない為に、藤崎は病気のことを告白せずに別れるが、理由も分からず振られる美沙緒も苦悩する。切ない。
看護婦の峯岸るい(千石規子)は、初めは藤崎を偽善的だと反感を持っていたが、藤崎の秘密を知ることになり、峰岸も人間的に少しずつ成長していく。
藤崎が峯岸に、内に抑えていた苦悩を告白するシーンは心を打つ。三船敏朗のちょっと大根っぽい演技もなかなかだが、一緒に号泣する千石規子 の方は本当の名演技。仙石規子の演技はこの作品を通して素晴らしかった。
藤崎に梅毒を感染させた中田(植村謙二郎)は治療もせずに、奥さん、そして胎児にも梅毒を感染させてしまう。恐ろしい結末。
おまけ: 国内 梅毒感染報告数
最近、若い人で梅毒感染者が増加しているらしい。治る病気と侮り、性感染に対する教育や公衆衛生対策が後退している懸念がある。
梅毒はコロンブスがアメリカから西欧に持ち込んだ病と言われている。最近の感染者の増加と訪日外国人の増加には関係があるだろう。
さらに恐ろし話。梅毒ではないが、淋病では抗生物質の効かない耐性菌が問題になっている。無知な性交渉から死に至るリスクがあるのだ。気をつけておいた方がいい。
https://www.cnn.co.jp/m/world/35116907.html
※今年46本目の映画鑑賞