晩春 1949年
小津安二郎監督
物語
妻を無くし、たった二人で暮らす父と娘の親子の物語。父を気遣い結婚しない娘に、父は結婚を勧める。
原節子が出演した「晩春」、『麦秋』、『東京物語」は、原節子が演じる女性の名前がいずれも紀子で、紀子三部作と言われる。本作「晩春」はその第一作にあたる。
小津安二郎の映画鑑賞二作目。「東京物語」と似たような感想だが、淡々としながら詩情豊かな作品だ。
小津安二郎の映画って、情にもろい日本人の感性のツボを突いていて、一人娘を嫁に出す父親の気持ちを描いた「晩春」は、日本人の情緒のど真ん中という感じでした。
ローアングルの固定カメラの撮影も日本的に思えた。フレームを固定することで生まれる静かな趣は、枯山水のような美学だ。
映画のテンポとか、間も日本的です。ハリウッド映画には「出だし5分で最初の事件らしいものが起きて、30分以内にターニングポイントがあって」というようなヒット公式があるらしいが、小津映画では事件らしい事件はなかなか起きません。起承転結ではなく、能の序破急のような語り口です。
アクションは少なく、登場人物の会話でリズムを作っていて、間が、あだち充の漫画に似ている気がした。両者に共通する間とか余韻って、日本人らしいセンスだと思う。
この映画で、小津・原節子コンビが生まれた。黒澤・三船コンビと同じく、両者の良いところが引き出されています。原節子の官能的とも言える美しさに、小津監督の原節子に対する愛情を感じます。映画撮るの楽しかっただろうな。
原節子さんは黒澤明監督の映画にも出演していますが、比較すると、黒澤さんは、強い女性が好きみたいで、女性を「美しく」描くのは苦手なんだな、と感じた。
「我が青春に悔いなし」八木原幸枝 役
「白痴」那須妙子 役
やはり小津安二郎は日本が誇る映画監督だ。だんだん好きになってきました。
※今年73本目の映画鑑賞