金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

彼岸花

彼岸花           1958年

小津安二郎監督

物語

 平山(佐分利信)は長女・節子(有馬)の縁談に思いを巡らせていたところ、突然会社に現れた谷口(佐田)から節子と付き合っている、結婚を認めてほしいと告げられ憤慨する。駆け落ちしている友人の娘・文子(久我)には一定の理解を示す平山だが、自らの娘である節子の結婚には賛成できずにいた……。

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小津安二郎監督の初のカラー作品である。小津映画を白黒で見慣れたせいか、カラー映画に違和感を覚えた。

色彩がある方が自然で臨場感が増すのだが、色彩のない造形や陰影の持つ美しさ、そのドラマ性が薄れてしまうようだ。

小津監督もカラー化のメリット・デメリットは意識していた筈で、カラー化にあたり小津カラーと言われる朱色で色彩を設計している。タイトルの彼岸花の朱色がお洒落に使われている、

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朱色を印象づける小道具に赤いヤカンがある。さりげなく置かれているが役者より存在感があって、ちょっと可笑しい。

カラーでぼやけた画面の構図美を色彩で再構築しているように見えた。

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物語は、原作があるせいか、「娘の結婚に反対する父親」「どこの家の娘も困ったもんだ」というありがちな内容で、ホームドラマみたいな感じがしたが、ラストの方で平山や三上らが同窓会で唱和するシーンは郷愁や寂寞感を感じさせ、小津監督らしく素晴らしかった。

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※今年92本目の映画観賞。