浮草 1959年
小津安二郎監督
物語
旅回りの駒十郎一座の乗った船が港に着いた。駒十郎は一膳飯屋にお芳を訪ね、その昔二人がもうけた清も今では郵便局に勤めていると知って安心する。清には駒十郎はお芳の兄ということになっていた。駒十郎の連れ合いのすみ子は、駒十郎とお芳の関係を知り嫉妬する。
1934年の松竹映画『浮草物語』を自らリメイクした作品。日常生活ではなく旅一座を物語にしていて、小津映画には珍しく、人物の感情がほとばしる力強い作品。宮川一夫が撮影として参加したことで映像的にも一味違う小津映画になっている。
雨の中で駒十郎(中村鴈治郎)とすみ子(京マチ子)が激しく罵り合うシーンは見もの。今まで見た小津映画で一番、緊張感のあるシーンでした。
加代を演じる若尾 文子さんもお綺麗です。小津映画に珍しいキスシーンもあります。
映画の終わらせ方が粋で良かった。待合室で煙草の火を分け合うシーンなど役者さんの演技力を感じた。
「お早よう」と「浮草」は両方とも1959年に公開されている。「浮草」は「浮草物語」をリメイクした作品で、「お早よう」は「大人の絵本 生まれてはみたけれど」をリフォームしたような作品だ。
きっと、思い入れのあるサイレント時代の作品を、音声の入ったカラー作品として撮り直して世に残したかったのだろう。「浮草」は小津監督の作品では異色だが、素晴らしい出来映えの名作だと思う。
※今年121本目の映画観賞