宗方姉妹 1950年
小津安二郎監督
物語
宗方家の長女節子は、酒浸りの夫を抱えてバーを営んでいる。妹の満里子にはそんな姉がもどかしかった。ある日満里子は、姉の昔の恋人の事務所を訪れる……。対照的な姉妹を中心にした物語。
大佛次郎の小説が原作。昼ドラみたいで面白い内容だが、上品な小津調には合わない。見終わった後に「東京暮色」で感じたような違和感が残った。
このドラマのテーマに姉妹の価値観の対立がある。古風で伝統的な価値観を大切にする姉と、進歩的でともすれば軽薄な妹の生き方の違いは、そのまま戦前と戦後の違いだ。
満理子を演じる高峰秀子の演技はコミカルで面白い。姉との対比を演じるだけでなく、暗い物語を明るくしている。
節子を演じる田中絹代。この頃、日米親善芸術使節として渡米、帰国パレードでの派手な服装や投げキッスが不評で「アメリカかぶれ」とバッシングされた。↓
その田中絹代が劇中で「新しいもの」を批判しているのは皮肉だが、「投げキッス」程度のことでバッシングされた現実こそが戦後の価値観の混乱を物語っているのかもしれない。
二人の対立は「それぞれが納得できる生き方をすれば良い」というアウフヘーベンに落ち着く。ラストで姉妹が仲良く歩くシーンは爽やかだ。
※今年134本目の映画観賞