放浪記 1962年
成瀬 巳喜男 監督
物語
行商人の子として各地を渡り歩き、成長してからは東京でカフェーの女給などを務めつつ、詩などをしたためる。やがて彼女は詩人・福地と結婚するが、その生活は貧しく辛いものだった。林芙美子の自伝を元にした映画。
「放浪記」が出版されたのは1930年。映画のほとんどは戦前の物語だけど古臭さを感じない。たぶん主人公(林芙美子)の自由奔放な生き方とか、孤独感とかが、現代に生きる人と共通するものがあるからだと思う。
この映画は、高峰秀子さんの演技が凄い。姿勢や表情、しゃべり方まで役作りが出来ていて、林芙美子の強かさが良く表現されていた。監督の演出もあるだろうが、役者の演技力なしでは成り立たない。
ラストシーンは、後年の林芙美子が描かれる。売れっ子作家となり生活も裕福になるが、一方で飢餓感から解放されない内面も見える。
是でも非でもない終わり方なのであまりピンと来ないが、成瀬監督は彼女の内面を、公開当時のまだ戦後復興過程にある日本人の心象風景と重ねて、その解釈を観る者に委ねたのではないかと思いました。
※今年166本目の映画観賞。