湯を沸かすほどの熱い愛 2016年
中野 量太監督
物語
1年前、あるじの一浩が家を出て行って以来銭湯・幸の湯は閉まったままだったが、双葉と安澄母娘は二人で頑張ってきた。だがある日、いつも元気な双葉がパート先で急に倒れ、精密検査の結果末期ガンを告知される。気丈な彼女は残された時間を使い、生きているうちにやるべきことを着実にやり遂げようとする。
コメディかと思ったら、家族愛を描いたヒューマン・ドラマでした。中野良太監督は自主制作の映画で知られていた人だそうですが、商業作品としとのデビュー作品で日本アカデミー賞を受賞しました。
主演の宮沢りえさん、娘役の杉咲花さんの演技が素晴らしい。カメラワークや映像センスも良い。
末期ガンを告知された女性が残僅かな人生を、家族の再生のために生きる。あまりベタな映画にしたくなかったのか、ラストは奇な終わり方になっています。
監督はインタビューで、「映画は、現実と虚構のギリギリの線が成立した時に大きな感動が生まれる。ラストシーンは一線を飛び越えちゃってもいいと思って作りました。」と言っていました。なるほどね。
終盤で映画タイトルを出す「悪い奴ほどよく眠る」や、煙突から赤い煙が出る「天国と地獄」など黒澤明のオマージュがある。作品そのものも「生きる」からインスパイアされたような感じなので、オマージュは黒澤監督への謝辞なんでしょうね。
※今年208本目の映画鑑賞。