拝啓天皇陛下様 1963年
野村芳太郎監督
物語
漢字がほとんど読めず、カタカナしか書けない純朴な男性が、兵役義務により新兵となるところから物語ははじまる。戦友であり良き理解者でもある棟本博との長年にわたる関係を描く。
棟田博の連載小説「拝啓天皇陛下様」を映画化した作品。反戦映画かと思ったら、原作者の棟田をモデルとしたムネさんこと棟本博(長門裕之)が陸軍で知り合ったヤマショこと山田正助(渥美清)を回顧する人情喜劇でした。
戦時中の軍隊などというと特攻とか玉砕とか殺伐としたイメージが強いが、棟田が入営していた昭和初期は戦争の影もなく兵営生活はのどかなものだったそうだ。映画に出てくる様々なエピソードは実際にあった話なのでしょう。
陸軍あるある by あるある探険隊
ほな行くで。
小銃の手入れが不十分で、「三八式歩兵銃殿にあやまれ!」と言われる。「あるある新兵イビリやな。」
「不況下でも三度の飯が食え風呂にまで入れる軍隊はまるで天国だ」と言う猛者がいる。「おるな、シゴキやイビリを屁にも思わん奴。」
「遊郭で古年兵と鉢合わせになる。」「だいたい新兵イビリする奴は女にもしつこかったりするな。」
「散々威張り散らしていた古年兵が除隊前に急に優しくなる。」「除隊の日に復讐されるの予知してるな。」
なんて、「あるある」エピソードですが、戦前の陸軍にいた人はいないから「あるある」にならないね。
こんなエピソードもありました。
「兵卒思いの隊長がいて、隊長の計らいで軍隊で読み書きを教わった。」これも、きっと実話なんでしょうね。
渥美清が演じるヤマショウは可笑しいけど、しんみりとした哀愁を感じさせる。この映画は戦争を美化したり兵士を英雄扱いすることもないが、ステレオタイプに戦争や軍隊を批判する内容でもない。右でも左でもなく、実際に陸軍にいた人が見聞きしたリアルがある。そんな視点も面白い映画だ。
※今年15本目の映画鑑賞。