金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

怒りの葡萄

怒りの葡萄             1940年

ジョン・フォード監督

物語

殺人容疑で入獄していたトムは仮釈放で4年ぶりに故郷オクラホマの農場に戻るが、小作人として働いていた一家は既に凶作の土地を逃れさったあとだった。叔父の家で家族と再会した彼は、みなで遥かカリフォルニアに行き、職を求めるのだったが……

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スタインベックが1939年に発表した小説を「駅馬車」のジョン・フォードが監督した。主演のヘンリー・フォンダは小説に感銘しトム・ジョード役を熱望。20世紀フォックス社が出した7年の専属契約の条件を呑む。

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スタインベックの「怒りの葡萄」。そりゃ有名な小説ですが、なんか重苦しくて近寄らず、「農民の貧困を描いた社会派作品」くらいの知識しかありませんでした。自分の中では、ぶどう農家の話かと思っていました…(切腹

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アメリカ中部を襲った凶作でオクラホマの農場を追い出された小作人が、仕事を求めてカリファルニアを目指します。おんぼろ車に家財や家族を乗せてルート66を走る。アメリカ大陸は広いですね。移動だけで大ドラマ、途中、旅のストレスで爺さん、婆さんは亡くなったりして、凄まじいロード・ムービーです。

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カリファルニアに着いた時は感動ですね。映画は白黒ですが、このシーンはカラーで見たかったな。

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希望を求めてたどり着いたカリファルニアでしたが、厳しい現実が夢を裏切ります。他州からの流入者で溢れてまともな仕事はなく、農場主は困窮する労働者の足元を見て低賃金で雇い奴隷のように扱っています。警察も農場主の味方で労働争議を起こす厄介者に暴力を振るったり逮捕したりします。

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トムは、社会の不公平・不正義を目の当たりにして、労働者が団結して戦うべきだと考えるようになります。そして家族に迷惑がかからないよう家族を離れることを決意するのでした。

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発表当時「怒りの葡萄」に対する保守層からの非難は激しく本書を除去する図書館も続出。こうした事態に対応し、図書館の読者の知的自由を守る決意として「図書館の権利宣言」が生まれたそうです。いや、半端ない名著ですね。

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ラクターの導入で農場を追放されるオクラホマ小作人が、AIやロボットに仕事を奪われるサラリーマンと重なって見えました。時代は変われど…リアルなテーマでした。

※今年19本目の映画鑑賞。