エデンの東 1955年
エリア・カザン監督
物語
第一次世界大戦下のカリフォルニア州サーリナス。 24歳のキャルは農場を営む父アダムが、兄のアーロンばかりを可愛がっていると感じ、反抗的な問題児扱いされていた。落ちこぼれで愛に飢えたキャルを、恋人のアブラは何かと気にかけていた。 ある日、キャルは死んだと聞かされていた母ケートが実は生きていて、モントレーで酒場を経営していることを知る。アダムが野菜の輸送中の事故で無一文になった時、キャルは父親を助けようと、ケートに資金を借りに行くが・・・
旧約聖書の「カインとアベル」を下敷きにしたジョン・スタインベックの原作をエリア・カザンが監督した。
ジェームズ・ディーンは、この映画で本格デビューした。彼が演じる反抗的で傷つきやすい若者像はセンセーションを巻き起こした。「エデンの東」はスタインベックの名作を映画化したものだが、彼の名演技が原作を超えた感動を作品に与えている。
ジェームス・ディーンは交通事故で24才という若さで亡くなってしまい、主演作は「エデンの東」「理由なき反抗」「ジャイアンツ」 の3作しかない。生きていれば、数多くの名作を生んだだろう。残念なかぎりだ。
旧約聖書でカインとアベルの物語は、「兄弟が各々の収穫物を神ヤハウェに捧げるが、神ヤハウェはアベルの供物に目を留めカインの供物は無視した。これを恨んだカインはその後、野原にアベルを誘い殺害してしまう」というものだ。
本作「エデンの東」では、父親の誕生日にキャルとアロンが父親にプレゼントをするが、父親はアロンのプレゼントを喜び、キャルのプレゼントを無視し、キャルのアロンに対する屈折した憎しみが爆発する。
旧約聖書で何故、神がカインの供物を無視したのかは分からないが、人が最初に犯した殺人の動機が金銭的なものではなく愛情の欲求と嫉妬心であることは印象深い。
アロンの婚約者アブラに思いを寄せるキャルだが、アブラもまたキャルに惹かれていく。カザン監督は、二人の距離感の変化を上手く表現していたな。
そして親子の物語。
キャルは自らの非行について父親に詫びる。父親もまたキャルを理解せずに冷たく扱ってきた非を悟る。
ジェームズ・ディーンの熱狂的崇拝者としても知られていた映画評論家の故・小森和子は「親子・兄弟・男女の愛憎をそれぞれ描いて、人類が住むこの地上の世界が全て「エデンの東」であることがテーマである」と述べている。
旧約聖書では神はカインを罰してエデンから追放するが、本作のエンディングは赦しである。
※今年27本目の映画鑑賞