金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

西部戦線異常なし

西部戦線異常なし             1930年

ルイス・マイルストン監督

物語

第一次世界大戦。祖国ドイツのためにと教師に熱く勧められて兵士に志願したポールは、戦場で実際の殺し合いを目の当たりにする。

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レマルクが1929年に発表し、世界的な大ベストセラーになった反戦小説の映画作品。第3回アカデミー賞で最優秀作品賞と最優秀監督賞を受賞した。タイトルの「西部戦線異常なし」は主人公のポールが戦場で亡くなった日の戦況報告だ。

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第一次世界大戦を描いた作品です。原作者のレマルクは同戦争に出兵しており、自身の経験を踏まえて本作を1929年に発表しました。

小説は大ベストセラーとなり発表された翌年に映画化されます。1000万人にも及ぶ犠牲者を出した第一次世界大戦が終了して10年しか経っていない時期に、敵国ドイツの立場で描いた作品をハリウッドで作ることは政治的なリスクがあったでしょう。映画の冒頭に製作者の立場がコメントされます。

「この物語は非難でも懺悔でもなく、ましてや冒険談でもない。なぜなら死に直面した者にとって死は冒険ではないからだ。これはたとえ砲弾から逃れたにしても、戦争によって破滅させられたある時代の男達を描こうとしただけである。」

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この映画は1930年(昭和5年)に日本でも公開されていますが、当時、映画館に並ぶ長蛇の列には憲兵が目を光らせていたそうです。映画公開の翌年には満州事変が起こり日本は泥沼の戦争へと向かっていきます。ドイツも同様で、ナチスの台頭が始まりレマルクは身の危険を感じて1932年にスイスに亡命しています。1933年にヒトラーが政権をとると書籍は焚書処分を受け、妹は強制収容所へ送られ死亡します。本当に恐ろしい時代です。

本作ただの映画ではない歴史的な重みがあります。第一次世界大戦の反省が活かされなかった歴史は本当に残念です。

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戦場の悲惨さをリアルに描いた映画はたくさんありますが、この映画が元祖なんですね。1930年にこんな映画を作りあげたルイス・マイルストン監督どんだけ凄いんだって感じです。

※今年50本目の映画鑑賞