八月の鯨 1987年
リンゼイ・アンダーソン監督
物語
メイン州の小さな島にある別荘で、毎年夏を過ごす老姉妹リビーとセーラ。かつて島の入り江は8月になると鯨が現われ、少女だったころの二人は鯨を見に行くのが楽しみだった。姉妹は長い間互いに支え合って生きてきたが、病気で目が不自由になった姉のリビーは周囲にとげとげしく接するため、彼女の世話をするセーラは心を痛め…
サイレント時代からの大女優リリアン・ギッシュとオスカー女優 ベティ・デイヴィス。撮影当時、リリアン・ギッシュは93歳、ベティ・デイヴィスは79歳。まさに奇跡の共演。
老いと姉妹愛を描いた作品。視力を失い気難しくなった姉のリビーと、彼女を気遣う妹セーラー。老いた姉妹の絆が美しい。
この映画は1987年に岩波ホールの創立20周年記念作品としてロードショー上映された。淀川長治さんが「絶賛」し、一年に及ぶ異例の長期上映になった。
淀川長治さんのコメント
「この脚本、演出、配役、ただ見事につきる名作だ。
この2人を一作の中に見る奇跡!
美術だ、詩だ、名舞台だ
ただ酔うのみ、涙あふらすのみ!
ぜったい、ぜったい、ぜったい、見逃し給うな!」
淀川さんは戦前にチャップリンと知り合いになっている。戦後15年ぶりに再会した際、淀川はチャップリンを見て泣き出した。チャップリンが「なぜ泣く?」と尋ねると「グレー・ヘアー」と答えた。チャップリンは黙って淀川の肩を抱いたそうだ。
淀川さんにとって、リリアン・ギッシュやベティ・デイヴィスは同時代のスターだ。彼女たちの老いた姿には、自らの年齢も感じさせられて本当に涙が止まらなかっただろう。
11回もアカデミー主演女優賞にノミネート(2回受賞)され、キャサリン・ヘップバーンと並ぶハリウッドの大女優。「フィルムのファースト・レディ」と呼ばれた。
映画の父グリフィスの「国民の創生」「イントラレンスタ」にも出演したサイレント時代がらの大女優。歳をとっても可憐な感じがありますね。
「老い」の悲しさ、寂しさ… そして寄り添い生きる姉妹の愛。小津安二郎に影響を受けたというリンゼイ・アンダーソン監督のさりげない描き方も素晴らしい。
※今年60本目の映画鑑賞