金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

アラバスター

アラバスター    /      手塚治虫

立東社

物語

顔に醜いアザのあるオリンピック金メダリストの佐野次郎は女優の美室令子と知り合い親密に付き合うようになる。ある日、佐野がプロポーズすると令子は本気の付き合いではないと結婚を断り、佐野の醜い顔を侮辱するのだった。逆上した佐野は令子を襲い、その際に自動車事故におこし裁判で懲役7年の刑となる。

刑務所内で知り合った元科学者の死刑囚F博士から、彼の発明品にして生物を透明にするF光線を放つ光線銃を譲り受けた佐野は、出所後に自分自身を透明化しようと光線に飛び込むが、その痛みに耐えかねて中断したこともあり、結果は皮膚が消えて血管が浮き出て見える醜悪な姿となってしまう。その後、完全な透明化は死につながることが判明した光線銃で佐野は令子に復讐した後、F博士の孫娘小沢亜美や不良少年ゲンを仲間に加え、世界中の「美」に復讐しようと凶行を重ねていく。

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1970年から1971年まで週刊少年チャンピオンに連載された手塚治虫の漫画作品。暗く救いのない話しで、手塚治虫自身が失敗作で嫌いな作品と公言している。

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オリジナル版の主人公は顔にアザのあるオリンピック選手。インパクトのある設定だが差別や偏見を助長すると考えだのだろう、単行本では主人公は黒人アスリートに、舞台もアメリカに変更されている。(人種差別も問題だけどね。)

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グロテスクな半透明の復讐鬼。猟奇的なダークヒーローの誕生。(醜い顔が嫌だからって透明人間になることは無いと思うけどね…)

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アラバスターのパートナー亜美。胎児の時に透明光線を浴び完全な透明人間になった。心根の優しい少女であったが、FBI捜査官のロックに辱められたことから復讐心にとり憑かれる。

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アラバスターを追うFBI捜査官ロック。変態的なナルシストで醜いものを激しく嫌悪する。

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天才の失敗作は、凡人の成功作よりはるかに面白い。そんな感じで、500頁一気読みでした。

※今年の漫画読書 19本目