殯（もがり）の森 2007年
河瀬 直美監督
物語
奈良県東部の山間地に、旧家を改装したグループホームに33年前に妻・真子を亡くしたしげきがいた。彼は亡き妻の想い出と共に静かな日々を過ごしていた。そこへ新しく介護福祉士の真千子がやってきた。彼女は子どもを亡くしたことがきっかけで夫との別れを余儀なくされ事で心を閉ざして生きていた。そんな二人が…
第60回カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールに次ぐ、審査員特別大賞「グランプリ」を受賞した。
「沙羅双樹」「あん」と観てきたので、自分の河瀬直美監督作品としては３本目。
いきなり読めないタイトル「殯（もがり）」！
この言葉は、日本の古代に行われていた葬儀儀礼で、ざっくり、死を悼む儀式だが、こういう言葉を見つける、河瀬監督の文学に対する造詣が深さがうかがわれる。
映画の内容としては、妻に先立たれた認知症の男と我が子を亡くした女性介護士の交流を描いたものだが、前半はドキュメンタリータッチでの作品だが、ドラマの後半真千子がしげきを追いかけ、二人が森に入り込んでからの展開はファンタジーっぽい。奈良の風景や、人物をしっかり描くことで、観る者を惹きつける。
「喪失感を抱えた人」と「癒し」いうモチーフは、「沙羅双樹」や「あん」にも通じるところ。河瀬監督の作家性を感じる良い作品だった。
※今年172本目の映画鑑賞。
