父親たちの星条旗 2006年
物語
第2次世界大戦の重大な転機となった硫黄島の戦いで、米軍兵士たちはその勝利のシンボルとして摺鉢山に星条旗を掲げる。しかし、この光景は長引く戦争に疲れたアメリカ国民の士気を高めるために利用され、旗を掲げる6人の兵士、ジョン・ブラッドリーらはたちまち英雄に祭り上げられる。
クリント・イーストウッド監督、硫黄島2部作のアメリカ側から描いた作品。
硫黄島で撮られた一枚の写真から始まる物語。この一枚はプロパガンダ用に撮られた写真だった。写真に写った6人の兵士らは英雄と祭り上げられるのだが、帰還後も苦悩を抱えて生きることになる。
戦争に英雄などいない。英雄は戦争を正当化するために作りだされる。
「硫黄島からの手紙」は硫黄島で玉砕した日本兵が描かれるが、一方の「父親たちの星条旗」では戦場での戦いだけでなく、帰還した兵士たちの”もう一つの”戦いが描かれる。
この映画は戦争反対!という単純なものではない。戦争をゲームのように考える政治家や軍部トップたちへの批判、そして実際の戦争を知らずに勝利や英雄に熱狂する大衆への警鐘である。
第二次世界大戦後もアメリカは朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、そしてイラク戦争と大きな戦争を繰り返し、多くの若者を犠牲にしている。彼らの戦争は終わっていない。
「硫黄島からの手紙」より難しい映画だった。アメちゃんもツラいね。
※今年230本目の映画鑑賞。