鶴は翔んでゆく / 戦争と貞操 1957年
物語
ロシアの青年ボリスのもとに召集令状が届いた。彼は最愛の恋人ベロニカを残して、戦線に出征し戦死する。だが恋人は彼の死が信じられず、やむなき事情で結婚したあとも、ずっと彼の帰りを待ち続けていた……
スターリンの死後、弾圧が終わり、言論の自由が生まれた ”雪解け”の時代のロシア映画。1958年のカンヌ映画祭でパルムドールに輝いた。
結婚を約束していたカップルが戦争によって引き裂かれてしまう話です。ベロニカ役のタチアナ・サモイロワはスクリーン映えするキリッとした美人。あのピカソが絶賛したそうです。
必ず帰ると約束して戦地に赴いたボリスですが帰らぬ人になってしまいます。
ボリスの死を知ったあとも、なお生存を信じて待ち続けるベロニカ。ボリスの為に持っていた花を戦地から帰る兵隊たちに配る。そんなモスクワの空に鶴が飛んでゆく。
カメラワーク、モノクロの陰影を活かした撮影が素晴らしい。スピード感とかドラマチックな演出とかロシア映画とは思えない斬新さ。セルゲイ・ウルセフスキーという有名な方が撮影されたそうです。
政治的な配慮か愛国的なメッセージが多いのですがプロパガンダではないようです。恋人を戦争で失った女性の苦悩を描いたヒューマンドラマの秀作でした。
※2019年最後(269本目)の映画鑑賞。