金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

の・ようなもの

の・ようなもの                  1981年

森田 芳光 監督

物語

古典落語の修業に励む二ツ目の落語家、志ん魚は23歳の誕生日、初めてソープランドに行く。そこで出会ったソープ嬢エリザベスと惹かれあい、デートを重ねるようになる。そんなある日、志ん魚は女子高の落研からコーチの依頼を受けた。そして部員の一人、由美とのデートにこぎつけたが、由美の父親の前で一席噺をしたところ、ちっとも面白くないと言われ、大いに傷ついてしまう。

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森田芳光監督の劇場映画監督デビュー作。落語家を目指す若者らを描いたコメディタッチの青春群像劇。

タイトル「のようなもの」は三遊亭金馬の十八番「居酒屋」からの引用だが、ベストセラー小説「なんとなく、クリスタル」にも通じる80年代らしい雰囲気。

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ソープ嬢秋吉久美子)のエリザベス。洋書を原書で読むほどのインテリなのに風俗嬢として働いて、寝る関係でも恋人にはならない。こういうのが時代の雰囲気だったかな。

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高校生と付き合う志ん魚。女子高生も大人びて、当時は「ぶりっ子」なんて言葉も流行しつていた。しかし、志ん魚、ソープ嬢と女子高生の二股とは最低(笑)。

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高度成長が終わった80年代の始めは、貧しくもなく、豊かでもなく「一億総中流」と呼ばれた。学生運動も下火になって政治に関心を持たなくなり、目的もなく危機感もない空虚な現実の中で、何においても熱くなりきれず 生きていた当時の若者は「しらけ世代」とも言われていた。

そんな時代の若者たちの漠然とした不安や雰囲気が伝わる映画でした。

 シー・ユー・アゲイン雰囲気 / 尾藤イサオ

※今年57本目の映画鑑賞。