金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

オリーブの林をぬけて

オリーブの林をぬけて   1994年

アッバス・キアロスタミ監督

物語

地震に見舞われ、瓦礫と化したイラン北部のコケール村。撮影の手伝いをしていたホセインは、新婚夫婦の夫役に抜擢された。偶然にも、妻を演じるのは以前プロポーズした少女タヘレで、文字も読めず家も無い男とは結婚させないと両親から断られていたが、その後の地震で両親を失ったタヘレから彼女自身の気持ちが知りたいホセインはひたむきに話しかける。撮影が終われば会えない。最後の日、彼は返事をもらうため、オリーブの林をぬけ、ひた走る……

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イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督作品。映画評論家の淀川長治さんが絶賛していた作品です。

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監督さん。映画の撮影を通して被災した地元民を応援したり、撮影の合間にホセインの恋の相談に乗ったりと人情家のようです。

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ホセイン。字も読めず家もないと両親に結婚を断られたけど、タヘレを諦めきれない。一途にタヘレを思う姿がいじらしい。

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タヘレ。イスラム圏の保守的な村では結婚相手は親が決めるもので、男とみだりに会話することは許されていないのです。ホセインを無視し続けるタヘレですが、本心は嫌いではないようです。撮影の時に何度もセリフを間違えるシーンがあるのですが、撮影が長引くよう、わざと間違えて時間を稼いでいたようです。切ないね。

アッバス・キアロスタミ監督は小津安二郎をリスペクトしていたそうですが、小津の映画も日本人の「言葉にはしない人情」が描かれています。地理的にも文化的にも遠く離れたイランと日本ですが通じるところがあるのだと思いました。

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圧巻はロングショットで描く恋の結末。果たしてタヘレの答えはイエスかノーなのか?

淀川長治さん絶賛。なるほど素晴らしい映画でした。

※今年34本目の映画鑑賞。