桜桃の味 1997年
物語
あらすじ
土埃が舞う道中、一台の車を運転する中年男バディ。彼は、街ゆく人々に声をかけ、車のなかに誘い入れてはある奇妙な仕事を持ちかける。「明日の朝、穴の中に横たわった自分に声をかけ、返事があれば助けおこし、返事がなければ土をかけてほしい。そうすれば大金を君に渡そう」。人生に絶望したバディの自殺幇助の頼みを、車内に招かれた、クルド人兵士、アフガン人の神学生らはみな拒絶する。だが最後に乗せたひとりの老人は、生きることの喜びをバディに語って聞かせるのだった…
イランの巨匠キアロスタミ監督作品、1997年カンヌ国際映画祭パルム・ドールを今村昌平の「うなぎ」と同時受賞した。
バディ。自分が自殺した後に、埋葬してくれる人を探しています。彼の悩みは明らかにされません、映画のテーマは、悩みから逃れるために死を選ぶことについてです。
バディが車に乗せた3人、兵士、神学生、そして老人。兵士や神学生は、この世を支配する力や法を、老人は人生の知恵を象徴しているのだと思います。
イスラム教での宗教の位置付けは法律なのですね…異文化を少し理解😲
映画の構成が「オリーブの林をぬけて」と同じですね。果たしてバディは自殺を思い止まったのか、否か? ラストのサプライズもよく考えたものだと感嘆します。
この映画の深いところは、自殺の是非善悪を問うのではなく、観客を死の淵に立たせて生きることの素晴らしさを見せるところです。こんな映画は滅多にない!
※今年35本目の映画鑑賞。