金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

たちあがる女

たちあがる女        2018年

ベネディクト・エルリングソン監督

物語

アイスランドの田舎町。セミプロ合唱団の講師ハットラには、謎の環境活動家「山女」というもう1つの顔があり、地元のアルミニウム工場に対して孤独な闘いを繰り広げていた。そんな彼女のもとに、長年の願いであった養子を迎える申請がついに受け入れられたとの知らせが届く。ハットラは母親になる夢を実現させるため、アルミニウム工場との決着をつけようと最終決戦の準備に取り掛かるが……。

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2018年カンヌ国際映画祭の批評家週間でSACD賞を受賞。。第91回アカデミー賞外国語映画賞アイスランド代表として出品されたが、ノミネートには至らなかった。

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過激な環境活動家の女性を主人公にした映画です。政府を敵に回して、たった一人で戦う姿はさながら女性ランボー。ハットラさん、カッコいいです。

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映画のシーンに、たびたびバンドや合唱隊が登場してBGMの生演奏や生歌を演じます。何これ?というコメディ演出ですが、観客が主人公に自己投影したり、作品に感化されたテロが起こらないよう、ドラマの虚構性を強調する狙いがあるのでしょう。

劇中でも主人公の行動を否定する報道や、あらゆる暴力に反対する双子の姉を登場させるなど思想的なバランスに注意を払っていて、監督の思慮深さを感じました。

余談ですが、つい最近、映画「ジョーカー」の影響を受けた京王線の事件がありましたが、ニュースを聞いた時に、犯人が「寅さん」でも観ていれば…と思いました。

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ドラマのもう一つの柱。ハットラが養子を迎えるエピソード。

主人公を「過激な活動家」から「普通の女性」に戻して、未来の子供たちのために環境問題にどう向き合うのかを観客に問いかけます。ラストの豪雨のシーンが、映画は虚構だが環境問題は虚構ではないと語るようです。

よく練られた脚本で感動しました。👏

※今年73本目の映画鑑賞。