金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

豚と軍艦

豚と軍艦                    1961年

今村昌平監督

物語

水兵相手のキャバレーが立ち並ぶ横須賀ドブ板通り。そこでモグリの売春ハウスを営む日森一家は、当局の取り締まりで根こそぎやられてしまい青息吐息。行き詰った彼らは基地の残飯を使って豚の大量飼育を考えつき、今までハウスの客引きをしていたチンピラ欣太も豚の世話をすることになるが…

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カンヌ国際映画祭で2度のグランプリを受賞した今村監督の1961年の作品。戦後の日本人を風刺し、今村重喜劇のスタイルを確立したと言われる。主演に 長門裕之、吉村実子。

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長門裕之のチンピラ演技が印象的でした。バカなニイちゃんって感じですかね。

スカジャンは横須賀に駐留していた米兵が、記念品として、鷲・虎・龍などのオリエンタルな柄をジャケットに刺繍したのが始まりと言われる。この頃から日本の若者のファッション・アイテムとして認識され始めていたのが分かります。

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吉村実子さん。芳村真理さんの妹で、今村昌平監督のスカウトでデビューした。この映画が初主演とは思えない演技でした。

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本作は、安保闘争に揺れる日本の状況を風刺した作品と言われます。まだ占領下のような横須賀で、米軍の残飯を利用したビジネスや、売春やオンリー(情婦になること)で生活の糧を得る最下層の人々が描かれます。経済を優先しアメリカに従属を選んだ当時の日本の葛藤や憤りも感じられます。

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欣太と春子の純愛が泣かせます。コメディというより純愛ドラマのジャンルじゃないかと思います。今までに今村昌平監督の作品では「楢山節考」「うなぎ」「復讐するは我にあり」を鑑賞していますが、本作を見て初めて今村映画の良さが分かったような感じがします。傑作映画でした。

※今年11本目の映画鑑賞。