仁義の墓場 1975年
深作欣二監督
物語
戦後の混乱期、新宿を舞台に暴力と抗争に明け暮れ、野獣のように生きた若いヤクザの凄まじい生と死。戦後暴力史上、最も凶暴と恐れられた男・石川力夫の半生を描く実録アクション。
深作欣二監督、渡哲也主演。東映実録路線の中でも暴力描写が突出しており「実録ヤクザ路線の極北」と評されている。
渡哲也の演技が凄まじい…。石川力夫というヤクザの狂気、暴力、孤独を見事に演じています。
石川の情婦の地恵子。可哀想な女性で凌辱されて情婦になり、石川に尽くすが報われることなく最後は自殺する。なんとも痛ましい。
冒頭のインタビューで石川は自分のことを「風船玉のようだ」と発言していたというものがある。劇中に出てきた赤い風船は彼の魂を象徴しているのだろう。ドキュメンタリー・タッチの作品の中では異質に思える詩的な表現だが、劇中ワンポイントだけ使用することで演出が際立っていた。深作欣二の演出テクニックに感嘆。
石川の辞世の句「大笑い三十年の馬鹿騒ぎ」
人生や社会など馬鹿馬鹿しい、好きに生きてやったと言うのだろう。親分を斬りつけ、恩ある兄貴分を殺す。戦後の混乱期にヤクザ社会のルールも無視して生きた男の狂気がここにある。
ヤクザ映画はあまり観ませんが、この作品はなかなか凄かった…。
※今年69本目の映画鑑賞。