白痴 1951年
物語
沖縄で戦犯として処刑される直前に人違いと判明して釈放されたが、そのときの後遺症でてんかん性の白痴にかかってしまった男、亀田は札幌の写真館のショーウィンドーに飾られていた那須妙子の写真に心奪われる。しかし彼女は愛人として政治家に囲われていた。ドストエフスキーの小説を原作とした映画。
ドストエフスキーを読んだことがないが、ロシア文学への偏見から退屈な作品と予想していたが、黒澤監督の映像、俳優の演技も素晴らしくて、2時間46分の映画が短く感じる程に面白かった。
この作品、一般的には黒澤映画の失敗作だと批評されている。曰く、日本人の感覚に合わないとか、大仰なストーリーだとか。実際、興行的にも振るわなかったらしい。名作「羅生門」と「生きる」の間に発表された作品くらいの位置づけになっている。
そう、確かに大ヒットする映画ではないのも理解できるし、他人に勧めるのも微妙だけど、僕的な黒澤映画ランキングではかなり上位だな。
当初4時間25分であった作品であるが、松竹の意向で大幅にカットされ2時間45分になったらしいが、完全版があるのなら是非観たい。
那須妙子を演じる原節子、主人公の白痴、亀田を演じる森雅之の演技が素晴らしい。
久我美子さんも、原節子に負けない演技。この映画は女性が魅力的。
三船敏朗は本作品では主人公ではありませんが、ドラマに緊張感を与える名脇役。やはり黒澤映画は三船敏朗ですね。
予想外に素晴らしい映画でした。
※今年29本目の映画鑑賞。