素晴らしき日曜日 1947年
物語
前後、間もない東京。貧しいカップルの、或る日曜日のデートを描いた作品。 2人の持ち合わせは35円(現在の価値で3500円程度)、結婚もままならなず、未来が見えません。男(雄造)は将来を悲観するが、女(昌子)は健気に彼を励まします。
テーマは明確。ずばり、役者が観客に語りかけるシーンがあります。
「みなさんの暖かいお心で、どうか励ましてやってください。お願いです。世の中にはあたしたちみたいに貧乏な恋人がたくさんいます。そういう人たちのために、どうかみなさんの拍手を送ってやってください。世の中の冷たい風にいつも凍えていなければならない貧しい恋人たちのために」
あまりに惨めな境遇で打ちのめされる感じがしました。先の見えない生活を送っていた人がたくさんいた時代に「それでも前を向いて生きて行こう」「みんなで若い人を助けよう」というストレートなメッセージを送った作品でした。
淡々とした映画ながら、一日の中でいろいろな出来事があり退屈させない。映像的にも流石、黒澤監督というシーンがいくつもありました。
ただ雨の中を走るだけでも、さすが黒澤監督。スピード感があって名シーンです。
ブランコのシーンは「生きる」だけでなかったのですね。2人が希望と現実を行ったり来たりするのを象徴しているようでした。
文句なしの名シーン、真夜中の演奏会。「未完成交響曲」も2人を象徴した曲名ですね。
※今年38本目の映画鑑賞