マージナル / 萩尾望都
小学館文庫 全3巻
物語
西暦2999年、地球は汚染されて不毛の地となっていた。人々は不妊ウイルスにより生殖能力を失い、唯一の女性である聖母「マザ」を中心として、その息子たちで世界は構成されていると信じられていた。 世界の中枢であるセンターはこの世界をミツバチ型社会「マージナル」と呼び、管理している。 年々子供は減少し、不安が募るなか、祭礼の日にマザが暗殺されてしまう。
「プチフラワー」(小学館)にて1985年8月号から1987年10月号まで連載された。
ギリシャ神話には女性だけの社会のアマゾネスの物語がありますが、このマージナルは男性だけの社会です。いやはや、凄いBL設定。
で、”マージナル”は新たな人類を地球上に生み出す為の実験都市プロジェクトで、宇宙空間に進出した人類がコントロールしていた、というSFなんです。
プロジェクトを指揮するメイヤードは進行性の病気を抱えていて、自身の死と共にマージナル・プロジェクトを終了させようと企んでいます。物語のラストの方で明かされる彼の苦悩やナースタースとの関係はドラマチック。
メイヤードのルックスに手塚オマージュを感じるのは僕だけだろうか?
主人公のキラは、科学者イワンが不毛の地上に人類を甦らせるために造った両生具有体。
キラはエゼキュラ因子と言われる特殊な遺伝子によりサイキック能力を有するが、他人の感情に共感してその夢を実現するもので、自身ではパワーを制御できない。
新しいマザのお披露目の日、世界の死を夢みる者の怒りや絶望に感応して大洪水を引き起こす。
本格的なSFでした。文庫本1巻の安彦良和さんの後書きが面白い。
安彦良和がちょうど「マラヤ 」という漫画を連載していて、これは核の火によって滅びた世界、<男は災厄である>として、男を排除した女だけの世界を描いた作品なのだが、萩尾望都のジェンダーに対する感性の深さ、作品のレベルの高さに「まいったな」と賛辞を贈っていました。
↑ムチムチぱっつん。読んでませんが、安彦良和さんが、打ちひしがれた気分になったのが解る気がします。
※今年の漫画読書 16本目