ミツバチのささやき 1973年
ビクトル・エリセ監督
物語
スペイン内戦が終結した翌年の1940年、6歳の少女アナが暮らす村に映画「フランケンシュタイン」の巡回上映がやってくる。映画の中の怪物を精霊だと思うアナは、姉から村はずれの一軒家に怪物が潜んでいると聞き、その家を訪れる。するとこそには謎めいたひとりの負傷兵がおり……
ビクトル・エリセ監督の第一作にして代表作。サン・セバスディアンでグランプリ受賞、シカゴ国際映画祭で銀賞受賞。
主人公のアナ、姉のイザベル。二人の姉妹の目を通して描いた "子供の世界" そのものがファンタジーな感じです。
寡黙な養蜂家の父、毎週のように誰かに手紙を書き、駅にその手紙を出しに行く母。二人の仲は不自然です。この家庭はスペイン内戦によるスペインの分裂を象徴していると言われています。
荒涼とした風景もスペインの孤立を象徴しているともいいますが、詩情あふれる風景に感動しました。静寂感が幻想的でした。
作品に出てくる、ミツバチ、毒キノコ、フランケンシュタインは毒や死の香りが漂います。そして、(ラストのネタバレを含みますが)死の淵から戻り、なおショック状態のアナに対して、医者が「生きていれば、回復に向かう」と希望を語ります。ラストシーンは、"祈り"でした。研ぎ澄まされた脚本に感服です。
※今年32本目の映画鑑賞。