金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

滝を見にいく

滝を見にいく        2014年

沖田修一監督

物語

幻の滝を見にいく紅葉ツアーに参加したおばちゃん7人が山中で遭難し、予期せぬ過酷なサバイバルに‥

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沖田修一監督。俳優は全員オーディションで採用。ロケ地は新潟県妙高市・幻の大滝、

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七人のおばさんが滝見学ツアーで遭難してしまい、苦労の末に、目指していた滝にたどり着く。

ストーリーらしいストーリーはないが、サバイバルをしているうちに、初めはいがみあっていたおばさんらがガールスカウトのノリになっていくのが可笑しい。

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ミニシアター向けのアイデア映画みたいな感じですかね。ゆるいコメディです。中盤、ちょっと眠たくなりました。

※今年60本目の映画鑑賞。

横道世之介

横道世之介        2013年

沖田修一監督

物語

長崎県の港町で生まれた横道世之介(よこみちよのすけ)は、大学進学のために上京したばかりの18歳。嫌味のない図々しさを持ち、頼み事を断りきれないお人好しの世之介は、周囲の人たちを惹きつける。お嬢様育ちのガールフレンド・与謝野祥子をはじめ、入学式で出会った倉持一平、パーティガールの片瀬千春、女性に興味を持てない同級生の加藤雄介など、世之介と彼に関わった人たちとが過ごす青春時代(1987年)を描く。

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吉田修一毎日新聞に連載し人気となった小説が原作を、沖田修一監督が映画化。主演は高良健吾吉高由里子

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映画は、1987年から始まる横道世之介の大学生活と登場人物のその後(2003年)のエピソードを描く。冒頭、上京した世之介が降りた新宿駅には、斉藤由貴のAXIA(カセットテープ)の大きな広告が見える。"この時代"の演出が憎い。

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青春グラフィティーって、いつの時代もほろ苦いものですね。祥子役の吉高由里子、世之介役の高良健吾が素晴らしい演技でした。

祥子がフランスへ留学する展開は、ちょっと当時のテレビドラマ「男女7人夏物語」の筋書に似ていますね。オマージュかもしれません。

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沖田修一監督作品をチェックしています。この映画では、世之介と祥子のキスシーンのカメラワークが凄いですね。あとラストの走る世之介のエンディングも好きです。「子供はわかってあげない」も走るシーンが良かった。

※今年59本目の映画鑑賞。

子供はわかってあげない

子供はわかってあげない  2021年

沖田修一監督

物語

アニメオタクで水泳部の高校生・美波は、学校の屋上で好きなアニメのキャラクターを描いていた書道部員のもじくんと友人になる。ある日、美波はもじくんの家で自分宛てに送られてきたものと同じお札を見つけ、新興宗教の教祖をしているらしい父・友充の存在を知る。探偵業を営むもじくんの兄・明ちゃんに頼んで友充の居場所を突き止めた美波は、合宿を口実に友充が住む町に行く。そこで美波は、友充と交流を深めていくのだが……

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田島列島の人気コミックを上白石萌歌主演で実写映画化した青春ドラマ。沖田修一監督

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「さかなのこ」が良かったので沖田修一監督の過去の作品をチェック。

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上白石萌歌さん、可愛い。撮影時は19才か。胸キュンです。今、「ちむどんどん」に出演しているそうですが、先が楽しみな女優さんですね。

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相手役の細田佳央太もあどけなく、かわいい。優しいお兄さん風で好印象。

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主人公の美波が、幼いころに別れた実の父親と再会する話。父親を演じる豊川悦司の演技も良かったです。

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まずストーリーがいいですね(これは原作コミックのお陰ですが)、上白石萌歌さんが演じる美波のキラキラ感は実写ならでは。他の俳優さんも素晴らしく、素敵な青春映画になっていました。素晴らしかった。👏

※今年58本目の映画鑑賞。

さかなのこ

さかなのこ      2022年

沖田修一監督

物語

毎日魚を見つめ、その絵を描き、食べ続けても飽きないほど魚が大好きな小学生の“ミー坊”。わが子が少々変わっていることを父親が心配する一方で、母親は彼を温かく見守り応援している。高校生になっても相変わらず魚に夢中なミー坊は、町の不良とも仲が良く、いつの間にか周囲の人々の中心にいるのだった。やがて、一人暮らしを始めたミー坊(のん)はさまざまな出会いを経験し、自分だけが進むことのできるただ一つの道を突き進んでいく。

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さかなクンをなんと、のんが演じる「さかなのこ」観てきました。監督は、「南極料理人」「子供はわかってあげない」の沖田修一監督。

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「男か女かはどっちでもいい」と映画の冒頭でスクリーンに掲げられ、さかなクン(劇中ではミー坊)を女性が演じる。幼少期を演じた子役(西村瑞季)が可愛らしい。

大人になったミー坊を演じるのは、のん、能年玲奈さん。さかなクンを見事に演じていた。いや、役づくりとかではなく役になりきっていましたね。のんの底しれない才能は「ジェジェジェ」で「ギョギョギョ」です。

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ミー坊の個性を否定せず、温かく育てたのお母さん(井川遥)、大人になってからミー坊に長い間の秘密を打ち明けます。(笑えました)素敵なお母さんでした。

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コミカルでリラックスして観れる映画ですが、さかなクンの存在がファンタジックなのですかね、演出もファンタジックで良かったです。のんの演技は脱帽もの。

※今年57本目の映画鑑賞。

ノマドランド

ノマドランド       2020年

クロエ・ジャオ監督

物語

ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく

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ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作。オスカー女優フランシスマクドーマンドが主演。第77回ベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞、第45回トロント国際映画祭でも最高賞の観客賞を受賞するなど高い評価を獲得して賞レースを席巻。第93回アカデミー賞では計6部門でノミネートされ、作品、監督、主演女優賞の3部門を受賞した。

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ロードムービーです。アメリカ西部の美しい風景が心打ちます。リーマンショックの影響で住んでいた炭鉱町までもが完全に閉鎖になり人生の全てを失う主人公のファーンはキャンピングカーで生活を開始するのですが、同じような生活を送るノマドたちとの出会いを通じて新しい人生を見つけてゆきます。

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主演はオスカー女優のフランシス・マクドーマンド。ドキュメンタリータッチの作品で控えめな演技ですがファーンその人と思えるようなリアリティがありました。

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映画の紹介から「経済社会から疎外された人たち」をジャーナリスティックに描いた作品かと思っていましたが全く違いました。ノマドと呼ばれる人々の心の内を描いた作品で、誰もが避けられない老いや死別をテーマにした作品です。

ドラマは、静かに始まり、静かに終わります。大した事件もありませんが、美しい風景と共に心に残る名画でした。

※今年56本目の映画鑑賞。

リトル・ダンサー

リトル・ダンサー      2000年

ティーブン・ダルドリ監督

物語

1984年、イギリス北部の炭坑町。11歳のビリーは炭坑労働者のパパと兄トニー、おばあちゃんと暮らしていた。ある日、ビリーの通うボクシング教室のホールにバレエ教室が移ってきた。ふとしたことからレッスンに飛び入りしたビリーは、バレエに特別な開放感を覚えるのだった。教室の先生であるウィルキンソン夫人もビリーに特別な才能を見出した。それからというものビリーはバレエに夢中になるのだが…

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スティーヴン・ダルドリー監督の長編デビュー作。英国アカデミー賞受賞。ビリー役のジェイミー・ベルは6歳のころからバレエを習い本作にオーディションでデビューした。映画は人気になりミュージカル化もされた。

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炭坑町に住む少年ビリー。イギリスって階級社会なんですね、典型的な労働者階級の家庭に育つビリー。父親はビリーにボクシングを学ばせるために教室に通わせるのですが、ビリーはボクシングより同じ体育館で開かれていたバレエ教室に夢中になってしまう。

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「バレエなんて女々しい」と反対してたガテン系親父が息子の才能を認めて応援しようと考えを変えるところがドラマチックです。愛のあるドラマです。

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瑞々しい青春ドラマ。主役ビリーだけでなく、父親、兄、祖母、亡くなった母親、バレエ教室の先生とその娘、ジェンダーに悩む友人、炭鉱町の人々ら、ビリーを取りまく人達が丁寧に描かれるたヒューマンドラマ。なかなかの良作でした。

※今年55本目の映画鑑賞。

 

ディア・ハンター

ディア・ハンター     1978年

マイケル・チミノ監督

物語

60年代末、ペンシルバニアの製鋼所で働くマイケル、ニック、スティーブンたちは休日になると鹿狩りを楽しんでいた。やがてマイケルたちは徴兵され、ベトナムへ。彼らは戦場で再会するが、捕虜となり、残酷な拷問ゲームを強要される。マイケルの機転で脱出に成功するが、その後ニックは行方不明に。マイケルは彼を捜すが……

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ロバート・デ・ニーロクリストファー・ウォーケン、メリル•ストリープら主演。ベトナム戦争に赴いて心に傷を負った3人の若者の生と死を描いた作品、第51回アカデミー賞で作品賞、監督・助演男優・音響・編集賞の5部門を受賞。

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主演のロバート・デ・ニーロ、本作でアカデミー助演男優賞を受賞したクリストファー・ウォーケン、これが遺作となったジョン・カザールらに加え、当時デビュー間もないメリル・ストリープが出演。

タイトルのディアは鹿のこと。ロバート・デ・ニーロが演じりマイケルは「鹿狩りは一発で仕留めなければならない」という信念を語る。生死をかけたやりとりは、この作品のテーマにつながる。

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この映画で有名になったロシアン•ルーレット。ベトナムで実際に捕虜にこのようなゲームをやらせた事実はなく、ベトナム人に対する差別的な描写が批判された。

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ベトナム戦争に人生を翻弄された若者たちの姿を描いた作品であるが、もう一つの見どころは出征したマイケル、ニック、スティーブンと、リンダ、アンジェラの関係です。

あからさまなネタバレのシーンがないので、一度観てピンとこないかもしれません。

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アカデミー賞5部門獲得しただけある、マイケル・チミノ監督の渾身の一作です。ただ一点、God Bless Americaを歌うラストシーン。このラストを称賛する方もいますが、僕は政治的な欺瞞と空虚さを感じました。

※今年54本目の映画鑑賞。