金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

東京暮色

東京暮色                 1957年

小津安二郎監督

物語

銀行員の杉山は、同居する次女・明子を心配している。母親の愛を知らずに育った明子はその寂しさを紛らすように複数の男と遊び歩いていた。そんなある日、明子は妊娠していることに気づき…。

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この映画は原節子さんも出演していますが、有馬稲子さんがヒロイン。岸恵子をイメージしてシナリオが書かれたが、雪国の撮影が伸び岸恵子が出演できず代役で有馬稲子さんが選ばれたそうです。

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東京暮色は小津安二郎監督の作品の中でも、異色作、問題作と評価されている。

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何が問題なのだろう?一言で言えば、「暗くて、やりきれない」話だからだ。

ただ暗いから駄目なのではない。小津安二郎作品の底流には、いつも口に出せない不安とか寂しさがあるが、淡々とした作風との絶妙なバランスで、登場人物に静かに寄り添うような情感を引き出している。

しかし、本作はその微妙なバランスが崩れている。ヒロインの境遇が不憫過ぎて、淡々した作風が、むしろ冷淡さや不条理さを感じさせているように思う。バランスが悪いのだ。

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悪く書いたが、起伏のある筋書きで、紀子三部作より面白く感じるところもあった。

まだ見ていない作品が多いのですが、小津映画の最北端を観たような感じです。

※今年82本目の映画鑑賞