金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

嘆きの天使

嘆きの天使           1930年

ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督

物語

生徒から嫌われている堅物の高校教師ラートは、学生達が出入りしているキャバレーを確かめようと潜入するが、そこで出会った踊り子のローラに魅せられてしまう。

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上海特急を観てからスタンバーグ監督は気に入っている。映像に力があるし、キレのある演出がいい。90年前のクラッシック映画だがドイツ映画の”モダン”さを感じます。

本作は母国ドイツで製作されたものでマレーネ・ディートリヒと組んだ記念となる第一作目です。

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途中まではコメディのような味わいですが、起承転結みたいな筋書きで、後半は哀しい転落劇になります。

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 現代から見ると、何故ここまで追い込むのかという悲惨な末路ですが、1930年代の人々には、キャバレーの女に入れ込む不道徳な男がたどる当然の結末でしょうね。(麻薬に手を出した人が廃人になるみたいな…)

この映画は結局、ラート教授を愚かな道化にしたブラックな喜劇です。笑えないけど。

 

茶化すと、こんな感じ↓

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電車でも、汽車でも人間でも、レールから外れると何が起こるか分かりませんからね。ホーッホッホッホ。

※今年202本目の映画鑑賞。

 

 

 

 

 

 

郵便配達は二度ベルを鳴らす

郵便配達は二度ベルを鳴らす       1946年

テイ・ガーネット監督

物語

 片田舎のガソリンスタンド兼ダイナーに、やってきた流れ者の男フランクは、オーナーの美人妻コーラと瞬く間に恋に落ちる。コーラとの関係を理由にそこで働き始め、密かに逢瀬を重ねるうちに、いつしか二人はオーナー殺害の計画を立てる...

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有名なタイトルですが初めて観ました。前半はありふれたサスペンスみたいだけど、見どころはオーナー殺害後のフランクとコーラの複雑な人間ドラマ。殺人という罪を犯し、内心では苦しみながらも愛し合う男女の関係がロマンチックだ。

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何回もリメイクされているだけのことはある。名作でした。

おまけ

僕が「郵便配達は二度ベルを鳴らす」というタイトルを初めて知ったのは1981年版です。タイトルとポスターから、郵便配達員との不倫が絡むサスペンスかと妄想していました。(笑)

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このポスターなら勘違いしても仕方ないよね…

※今年201本目の映画鑑賞。

 

 

 

 

 

 

山の音

山の音                   1954年

成瀬巳喜男 監督

物語

 戦後間もない鎌倉で息子夫婦と同居する信吾。不実な夫の仕打ちに耐え続ける嫁・菊子を不憫に思い、いろいろと信吾が彼女を気遣う中、菊子の妊娠が発覚する。

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川端康成の小説を成瀬巳喜男監督が映画化した文芸作品。

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成瀬巳喜男監督の映画も、だいぶ観てきましたが、代表作と言われる「浮雲」に負けない名作です。主演の原節子上原謙も良かったですが、信吾を演じる山村聰の繊細な演技に感動しました。

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ネタバレになりますが、菊子は修一と別れることを決意します。原作小説と異なる終わり方だが、映画としては、すっきりしていて良いように思います。成瀬監督の映画センスが光っています。

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素晴らしい映画なのに然程有名でないのが残念だ。川端康成の原作と比較されたり、雰囲気が似ている小津安二郎監督の「東京物語」と比較されるかだろうか。世の評価は別にして、いい映画だった。

※今年200本目の映画鑑賞。

 

キッチン・ストーリー

キッチン・ストーリー       2003年

ベント・ハーメル監督

  1950年、スウェーデンの家庭研究所では、ノルウェーの独身男性の台所での行動パターンの調査を行うことになった。調査員のフォルケは、老年の独身男性イザック宅へ。調査対象とは決して話をしてはいけないという規則だったが、ふたりいつしか話をするようになり、ゆっくりと交流を温めていく。

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独身男性のキッチンでの行動を調べるという奇妙な調査、調査員と観察対象の微妙な空気感。スェーデンとノルウェーの微妙な国民意識とか、よく分からないけどユーモラスだ。

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些細なやり取りから次第にフォルケとイザックの間に友情が芽生えていく。北欧の人は警戒心が強いとか人見知りをするとか、聞いたことがあるけど情は深いのですね。その辺の感覚は日本人にも近いかも。後半は心温まる物語。地味だけどいい映画でした。

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意味ないけど、映画を観た後、ノルウェーとスェーデンの位置を確認してみました。

※今年199本目の映画観賞

 

 

 

 

 

 

 

紳士協定

紳士協定                  1947年

エリア・カザン監督

物語

 一人のジャーナリストが、アメリカの反ユダヤ主義を調査するため、自らユダヤ人と偽って取材をする。ユダヤ人の立場になって初めて分かる様々な差別。出版社自体にも存在する偏見と闘いながら、真の正義を追求していく姿を描く。

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「波止場」「欲望という名の電車」「エデンの東」のエリア・カザンが監督した。第20回アカデミー賞作品。

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ユダヤ人差別を扱った社会派ドラマ。ハリウッド映画らしくラブストーリーを絡めて話は展開するが、正直、プロバガンダ・教育的なところがあり余り面白くない。

  冒頭で世界を支えるアトラス像が出てくるけど、戦勝国アメリカの自信に満ちた理想主義を象徴しているように思える。当時(ベトナム戦争以前)アメリカ人はアメリカが旧世界の悪弊を変えると素直に信じていただろう。そんな気持ちで、この映画を観ると伝わってくるものがある。

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おまけ、グレゴリー・ペックはダンディでカッコ良かった。比類なき二枚目スターです。

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※今年198本目の映画観賞

嵐が丘

嵐が丘              1939年

ウィリアム・ワイラー監督

物語

荒野に佇む古い館・嵐が丘の主人アーンショーに養子として引き取られた孤児ヒースクリフは、アーンショーの娘キャサリンと恋に落ちる。しかし、キャサリンが上流階級の青年エドガーにプロポーズされたことを知った彼は、ショックから姿を消してしまう。数年後、都会で成功したヒースクリフ嵐が丘へと舞い戻り、自分を貶めた住人たちへの復讐を開始する。

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エミリー・ブロンテの名作小説を映画化したものですが、この作品は何回もリメイクされているそうです。本作は1939年に初めてハリウッドで映画化されたものです。

プロダクション・ノートによると原作の途中まで、キャサリンの死後の復讐劇を割愛して、ヒースクリフとキャサリンの愛の物語としてまとめたそうです。

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凄い映画でした。しかし、粗野で逞しいジプシーの男と優しい富豪の夫との間で気持ちが揺れるキャサリンとか、ヒースクリフの復讐とか。結構、漫画チック。韓国ドラマみたいです。

ああ、きっと若きエミリー・ブロンテ(1818〜1848)が女子妄想パワー全開で書いたんだろうな。池田理代子さん(ベルばら)みたいな作家さんに違いない。(勝手な想像)

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※今年197本目の映画観賞

 

 

恐るべき子供たち

恐るべき子供たち                 1949年

ジェン・ピエール・メルヴィル監督

物語

母を亡くし、ふたりきりになったエリザベートとポールの姉妹。ポールの友人ジェラールや、エリザベートのモデル仲間アガトがふたりの生活に入り込むなか、エリザベートを見初めた富豪が死亡。屋敷を受け継いだ彼女は、4人で共同生活を始める。

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ジャン・コクトーの同名小説の映画作品。本作はヌーベルバーグの先駆けとして評価されている。

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 エリザベートとポールの姉弟2人の世界はダルジェロスが投げた雪玉から崩れていく。エリザベートを密かに愛するジェラール、そしてダルジェロスに瓜二つのアガート。4人の関係がもつれて破局へと向かう。まるで神話的のような悲劇。4人の関係を象徴するかのような音楽、バッハの<4台のチェンバロのための協奏曲 イ短調 〉が印象的です。

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コミックで「恐るべき子供たち」を読んだのは高校の頃。萩尾望都さんが原作と思っていました。当時は何が良いのかピンと来ない作品でしたが、映画を観てようやく作品の世界観が理解できました。今更だけど、コクトーの小説をコミック化した萩尾望都さん凄いな。

※今年196本目の映画観賞