金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

雑記 : 今年観た映画 (2020年振り返り)

少し早いですが、今年、鑑賞した映画の振り替えり。

今年は54本(12/15時点)の映画鑑賞しました。その中で、特に印象に残ったマイベストを洋画・邦画それぞれ三本づつ紹介します。

 

【 洋画 】

1.ウンベルト.D 

ヴィットリオ・デ・シーカ監督

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巨匠デ・シーカ監督の作品は心に残りますね。困窮する年金生活者を描いた作品。ネオ・レオリズムの傑作でした。

2.大きな鳥と小さな鳥  

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督

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イタリアの喜劇王と言われたトトが醸し出す不思議なオーラ。ナンセンスな物語とパゾリーニ監督の斬新な演出。何これ?って感じですが、忘れられない作品になりました。

3.ブリキの太鼓

 フォルカー・シュレンドルフ監督

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映画を観終わってから、暫く、脳しんとう状態。これだけ衝撃を感じた作品は久々でした。テーマも難解、奥深い作品です。

 

【 邦画 】

1.洲崎パラダイス赤信号

川島雄三 監督

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洲崎に流れついたカップルの物語、ストーリーはありふれた人情話かもしれないけど、舞台となる洲崎、当時の風俗を描き方が見事です。小津や成瀬にはないフレッシュさ! いい映画でした。

2.キューポラのある街

浦山 桐郎監督

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貧困や差別、戦前からの旧弊や矛盾が残る戦後間もない昭和30年代。世相、というか当時ね雰囲気が伝わってくる映画。まだ女学生だった吉永小百合が清々しさ。父親役の東野英治郎もハマっていて良かった。

3.少年

大島渚監督

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全国を旅しながら、当たり屋で生計を立てていた一家を描いた作品。自動車が普及し始めた高度成長時代に実際にあった事件を題材にしたものだそうです。少年らの演技が心を締め付けました。

 

【 番外 】

鬼滅の刃    無限列車編

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コロナ禍の最中に異例のヒット。と言うか、作品の世界観が、コロナ禍の暗い世相と重なって刺さったのでしょうね。今年唯一、映画館に足を運んだ作品になりました。

 

今年もまだ半月残していますが、これからも、いい映画に出会いたいものです。

 

おしまい。

カイロの紫のバラ

カイロの紫のバラ             1986年

ウッディ・アレン監督

物語

30年代のニュージャージー。熱心に映画館に通いつめるウェイトレスに、ある日スクリーンの中から映画の主人公が語りかけてきた。銀幕を飛び出し、現実世界へ降り立ったその主人公は、ウェイトレスを連れて劇場を後にする。大慌ての興行者たちをよそに、2人の仲は進展していく。そして、主人公を演じた本物のスターが現れた事によって事態はますます混乱を極めていく……

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 「アニー・ホール」のウディ・アレン監督のロマンチック・コメディ。英国アカデミー賞 作品賞、ゴールデングローブ賞 映画部門 脚本賞などを受賞している。

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映画のスクリーンから登場人物が飛び出して現実世界に降り立つ。このアイデアキートンのコメディ映画で使われたものだそうです。映画評論家の淀川長治さんは、この映画に30年代の活動写真のノスタルジーに誘われたと、ウッディ・アレン監督の映画愛と才能を褒めていみした。

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スクリーンの世界と現実世界を跨いだドタバタぶり、不幸な結婚生活を送るセシリアに訪れたロマンスの行方に盛り上がります。

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他愛のないコメディと油断していたら、ラストでやられました。ウッディ・アレンらしいアイロニカルなエンディング…才気を感じさせますね。

※今年54本目の映画鑑賞。

グリーンマイル

グリーンマイル                   1999年

フランク・ダラボン監督

物語

大恐慌時代の1935年、ポールは刑務所の看守主任を務めていた。グリーンマイルと呼ばれる通路を通って電気椅子に向かう受刑者たちに安らかな死を迎えさせてやることが、彼らの仕事だった。ある年、この刑務所に身長2メートルを越す黒人の大男、コーフィが送られてくる。双子の少女を殺害した罪で死刑囚となった男だ。ところがこの男は、ある日不思議な力でポールが患っていた病気を治してしまう…

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スティーブン・キングの同名小説の映画化作品。同じくキング原作の「ショーシャンクの空に」のフランク・ダラボンが脚本、監督を務めた。アカデミー賞には作品賞をはじめ多くの部門にノミネートされた。

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不思議な能力を持つ巨漢の黒人コーフィ。凶悪な殺人レイプ犯として死刑判決を受けてグリーンマイルに収監されるのですが…。調べたらコーフィ役のマイケル・クラーク・ダンカンはもう他界してしまっているのですね。残念です。

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トム・ハンクス。ハリウッド・スターとしては地味だけど、どんな役もこなす名優ですね。コーフィーとのお別れのシーンが泣けました。

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残忍で厄介な新米看守パーシー(ダグ・ハッチソン)。脇役、悪役がしっかりしているとストーリーに緊張感が出て締まります。

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原作小説を読んでいるのでネタバレでしたが、映画の出来は良くて、3時間の長尺も短く感じました。すっきりしない皮肉なエンディングもキングらしくていいです。

※今年53本目の映画鑑賞。

夜の大捜査線

夜の大捜査線         1967年

ノーマン・ジュイソン監督

南部で発生した殺人事件の容疑者として、駅で列車を待っていた黒人青年ヴァージルの身柄が拘束された。しかし警察の取り調べによって、ヴァージルは殺人課の刑事であることが判明する。警察署長のビルは、ヴァージルに反感を覚えながらも、協力して捜査を進めていくが…

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 人種偏見が根深い南部の町を舞台に、黒人刑事と白人署長が対立しながらも事件を解決していくサスペンスドラマ。アカデミー作品賞をはじめ全5部門を受賞しています。音楽はクインシー・ジョーンズ、主題歌はレイ・チャールズとブラック・ミュージックのレジェンドが参加。

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映画の公開年は1967年。50年代からのアメリ公民権運動の終わりの頃です。まだ人種差別の根強い南部を舞台に、黒人のヴァージル刑事が活躍し殺人事件を解決するのですが、捜査の中で目の当たりにする人種差別が本当に酷い。逮捕されたり、殺されそうになったり…。現代に繋がる人種差別の根深さを感じます。

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主演のシドニー・ポワティエは黒人スターの先駆け的存在。(黒人で初めてアカデミー主演男優賞を受賞した俳優)渋い演技。

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署長役のロッド・スタイガー(本作によってアカデミー主演男優賞)。いかにも田舎の警官みたいな雰囲気、はまり役。

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街を去ろうとするヴァージルに、留まって捜査に協力するよう依頼する署長。ベンチに離れて座る”距離感”。巧みな演出ですね。

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終幕、事件を解決し二人は握手しますが、原作では署長が握手をしようか迷ったまま結局出来ずに刑事を送り出すそうです。映画と原作、2つのエンディングの違いは考えさせられます。

※今年52本目の映画鑑賞。

ブリキの太鼓

ブリキの太鼓                 1979年

フォルカー・シュレンドルフ監督      

ナチス台頭期のポーランド。3歳になったオスカルは、その誕生日の日、母からブリキの太鼓をプレゼントされる。この日、彼が見た大人たちの狂態を耐えられないものと感じたオスカルは、その日から成長を止めた。

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ギュンター・グラスが1959年に発表した小説の映画化作品。ニュー・ジャーマン・シネマの旗手、フォルカー・シュレンドルフが監督しカンヌ映画祭グランプリ、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。

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成人並みの知性を持って生まれ、自らの意思で成長をコントロールしたり、叫び声でガラスを割ることができる悪魔的な少年オスカル。そして彼以上に悪魔的な”時代”〜ナチスが台頭でダンツィヒ市民は分裂して、暴力や差別が横行している。作品の寓話性とリアリズムが”気持ち悪さ”を相乗的に高めます。

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エロチックなシーンやグロテスクなシーンがあります。一部の国では、児童ポルノとして検閲されたり、上映禁止になったりしているそうですが、セックスと暴力、生と死など作品のテーマなんでしょうね。

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かなり衝撃度のある作品でした。いろいろな解釈ができる作品で、一言で語れる映画ではないです。これは凄い映画だなぁ。

※今年51本目の映画鑑賞。

 

 

グロリア

グロリア                              1980年

ジョン・カサヴェテス監督

物語

マフィアの重大な秘密を売ろうとして惨殺された一家から男の子フィルを助けた中年女グロリア。しかし問題の秘密はフィルが持ち出していたことを知ったマフィアは少年をかくまったグロリアをも狙い始める。

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「インディペンデント映画の父」と称され多くの巨匠に愛されたジョン・カサヴェテス監督の作品。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。

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グロリアはマフィアの元情婦。同じアパートに住むマフィアに追われる子供を預かってしまい、マフィアと戦うことに…リュック・ベッソン監督の「レオン」とストーリーに重なるところがあり同作の元ネタとの噂も。

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とにかくグロリア(ジーナ・ローランズ)がカッコいいですね。女性の強さ、優しさなんかを感じます。

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子役のフィル(ジョン・アダムス)。ませガキで生意気な口をきくのですが、そこが可愛い。

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テンポのいい映画です。ハード・ボイルドなタッチですが、グロリアとフィルが次第に心を通わせていく過程がヒューマンな感じでいいですね。洒落てます。

※今年50本目の映画鑑賞。

もやもや日記 : アメリカ大統領選挙

2020 アメリカ大統領選挙民主党バイデンの勝利でほぼ確定した。(トランプはまだ法廷で争うらしいが)

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事前予測ではバイデン圧勝だったが、トランプは善戦して歴史に残る接戦になった。

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民主党支持者は団結した。前回2016年の選挙で優勢だったヒラリーがトランプに敗北を喫した反省が活きた。最後まで気を緩めず、史上最大7400万以上の票を獲得することになった。

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一方、トランプ共和党も7000万票を集めている。(コロナ対応の失策やジョージ・フロイド抗議運動があったにもかかわらずだ。)トランプに対する支持の大きさに驚かされる。

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トランプの政策は良くも悪くもゲームチェンジャーだったと思う。トランプがホワイトハウスを去っても、一度変わってしまった流れは元に戻らないかもしれない。トランプの政策への支持は残るだろう。

バイデンはトランプ時代の米国分断を「癒やす」と語るが、なかなか難しいのではないか。

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友蔵76才、バイデン77才

  わしだって、まだまだやれる、ヤングマン

                                           ( 友蔵 心の俳句)

おしま い。