金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

グリーンブック

グリーンブック      2018年

ピーター・ファレリー監督

物語

1962年。NYのナイトクラブで用心棒を務めるトニー・リップは、ある日、黒人天才ピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。ホワイトハウスで演奏したほどの天才は、差別の残る南部への演奏ツアーを企てていた。2人は黒人用旅行ガイド=グリーンブックを頼りに出発する。

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実話を元に、南部への演奏ツアーに向かう黒人ピアニストとイタリア系運転手の絆を描くドラマ。アカデミー賞作品賞を含む3部門受賞。出
ヴィゴ・モーテンセンマハーシャラ・アリ

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2019年度のアカデミー作品賞の受賞作品で黒人差別を扱っています。最近のアカデミー賞は人種差別やLGBTをテーマにした作品がよく選ばれます。アカデミー賞の選考委員のリベラル嗜好もありますが、最近のジョージフロイド事件などに見られるように、アメリカにおいては未だに深刻な社会問題で、トランプ政権下で激しくなった白人優越主義に対する現代的な意味合いもあったのではないかなと思います。

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トニー・リップとドクター・シャーリー。この二人は実在の人物なんですね。実話を基にした映画って、どこまでが事実で、どこからが脚色なのが気になるところですが、映画では2ヶ月のツアーですが、実際には一年以上だったそうです。

一番気になったのは、ドクター・シャーリーが同性愛者として描かれているシーンがあるのですが、本当のようですが、本人がカミングアウトした事はないそうです。

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この映画、エンターテーメントもしっかりしていて、シリアスなテーマでも深刻になり過ぎないバランスが良かったです。性格や暮らしぶりが全く異なるトニーとドクターとのユーモラスな掛け合いや、二人に育まれ友情、なかなかのグッドなドラマでした。

※今年24本目の映画鑑賞。

 

 

天使

天使         1931年

エリンスト・ルビッチ監督

物語

英国外交官パーカー卿の夫人マリアは、夫の出張中、内緒でパリに赴き、旧友のロシア大公妃の怪しげなサロンに顔を出し、そこで出会ったアンソニーと食事を付き合う。マリアは名前も明かさずに、夢中になるアンソニーを残して消え去ってしまう。
その後アンソニーはロンドンの昼食会でパーカー卿に出会う。二人は旧友でアンソニーはパーカー邸に招かれるのだか、そこでパリで見失ったマリアと再開する…。

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ルシオール・レンギールの舞台劇「天使」を名匠ルビッチ監督が映画化した作品。マレーネ・ディートリヒ主演。

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マレーネ・ディートリヒ、いつも妖しくお美しい。さて、ディートリヒ演じるマリアは地位ある外交官の夫人で、夫を愛していながらが、妻を放ったらかしで仕事で世界を飛び回っている夫に欲求不満で、夫の不在中にパリでアバンチュールを楽しみます。不倫ドラマを見尽くした現代では驚きのない設定ですが、1930年代ならセンセーショナルだったかもしれませんね。

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冒頭のパリのエピソードまではロマンチックな感じでいいのですが、後半は退屈ですね。

パーカー邸での再開、二人の関係を知らない夫パーカーを挟んでのアンソニーとマリアの気まずい会話…この映画の見どころですが、ピアノなど小物を使いながら、だんだんと抜き差しならないムードになっていくあたりはルビッチの演出の真骨頂で、映画としても見どころなんですが、(正直言って)なんか回りくどい…。

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ラスシーン、アンソニーを袖にして夫を選ぶマリア。寄りを戻してハッピー・エンド。

アンソニーとパーカーが殴り合いでもしてくれたら納得なんだけどね…、この映画、出演したマレーネ・ディートリが凡作と酷評しているそうですが、「当時の」女性の視点でも納得いかないエンディングだったのではなかな〜。

※今年23本目の映画鑑賞。

すばらしき世界

すばらしき世界    2021年

西川美和監督

物語

旭川刑務所で刑期を終えた元殺人犯・三上正夫は上京し、身元引受人の弁護士・庄司夫妻に迎えられる。その頃、テレビの制作会社を辞めたばかりで小説家を志す青年・津乃田に、前科者の三上の取材依頼が舞い込む。生活のために津乃田は依頼を受けることに。

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原作は佐木隆三の「身分帳」。元殺人犯の主人公を役所広司が演じるほか、仲野太賀、長澤まさみ橋爪功梶芽衣子らが出演。

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役所広司主演ということで、大いに期待して観ましたが、いや素晴らしい!全く期待を裏切らない。すぐにカッとする性分だが、ひたすらに真っ直ぐな性格で憎めない元殺人犯の役を見事に演じていていました。

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刑期を終えて社会に復帰した元殺人犯という役は、今村昌平監督の「うなぎ」とも重なりますが、暴力シーンもあって、漢っぷりも魅せてくれます。

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ドラマも良かったです。受刑者の社会復帰の難しさなどの社会問題も考えさせるし、ボランティアで身元保証人を引き受ける夫婦、三上を取材するフリーのテレビマン、役所のケースワーカー、隣人のスーパーの店主など、三上を支援する人々の善意が心温まります。ヒューマンドラマとしても厚みがありました。

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久しぶりに映画観た〜。ラストシーン、空に浮かびあがるタイトル。物語に読点( 。)を打つような終わり方で僕は好きでないが、それはさておき、映画の始まりからエンディングまで、しっかりした脚本でいい映画でした。

【私信】

最近、忙しくて映画鑑賞ができてなくて、ブログも一カ月ぶりの更新になってしまいました。(まだ暫く、忙しそうです。)

m(_ _)m

※今年22本目の映画鑑賞。

新解釈・三國志

新解釈・三國志    2020年

福田雄一監督

物語

いまから1800年前、中国大陸では中華統一をめぐって「魏」「蜀」「呉」の三国が群雄割拠していた。そんな世に、民の平穏を願う武将・劉備が立ち上がる。劉備ら各国の武将たちは激動の時代を駆け抜け、やがて魏軍80万と蜀・呉連合軍3万という、圧倒的兵力差が激突する「赤壁の戦い」が巻き起こる。人々を憂い、人望も厚い人物として知られる劉備だが、実は……

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大泉洋劉備玄徳。監督は劇団「ブラボーカンパニー」座長の福田雄一監督。

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くだらない、実にくだらない。テレビのバラエティ番組レベルです。でも40.1億円(年間4位)という快挙👏。大泉洋ムロツヨシさんらの人気は凄いですね。

2019年の「翔んで埼玉」の大ヒット(37.6億円)もそうですが、バカバカしい方が素直に笑えたりしますね。ストレスの多い時代にこういう作品も貴重です。

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この映画を観ていて、なぜか志村けんさんを思い出してしまいました。コロナで亡くなられたことが本当に残念です。

あと堺正章さんの孫悟空とか、福田監督もこういうのが好きだったんじゃないかな〜と想像。

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※今年21本目の映画鑑賞。

去年マリエンバートで

去年マリエンバートで  1961年

アラン・レネ監督

物語

凝った装飾の施された、石作りの豪華なホテルで富裕層たちがパーティに興じていた。ある男性客は、夫と滞在中の夫人に「去年マリエンバートで会いましたね」と話しかけるが、夫人は思い出せない。だが男の話を聞くうち、夫人は記憶を取り戻していく…

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アラン・ロブ=グリエによる脚本をアラン・レネが監督したフランス・イタリア合作作品。主演、デルフィーヌ・セイリグ。1961年、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。

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萩尾望都さんの漫画(バルバラ異界かな?)で知って気になっていた作品、レンタルとか探していたのですがなかなか見つからなかったのですが、U-NEXTで公開されていたので遂に鑑賞できました。👏

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ちょっとオシャレな普通のラブストーリーかと想像していましたが、時系列や主観・客観が交錯する実に難解な作品でした。

夫人と、夫人の夫らしき男、夫人に昨年駆け落ちを約束したと言う男の三角関係のようですが、解釈は様々で、夫人は男にレイプされたとか、男は死神であるとか、いろいろな見方があるようです。この作品は黒澤明の「羅生門」に影響を受けたそうで、まさに真相は「藪の中」です。

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映像がスタイリッシュ。豪華な宮殿と幾何学的な美しさを持つ庭園、ココ・シャネルがデザインした衣装、デルフィーヌ・セイリグの演技、夢か現か惑うような幻想的な演出‥、芸術的です。

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正直、何回か寝落ちしました(笑)。でも素晴らしかった。インスピレーションを掻き立てられる芸術的な面白さを感じました。いい映画でした。

※今年20本目の映画鑑賞。

もやもや日記:中国の風刺画

最近、中国は風刺画による政治キャンペーンをしているのでしょうか?国レベルで他国を風刺、揶揄する中国に驚きました。

日本の汚染水処理

東京電力福島第一原発の処理水を海洋放出する日本政府の方針について、中国外務省の趙立堅副報道局長は26日、ツイッター葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模した画像を投稿して批判した。

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汚染水の処理に近隣国からの批判があるのは当然かもしれないが、国家レベルでパロディ画はないだろう。風評被害に苦しむ福島の漁業関係者からも憤りの声が出ていたぞ。

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しかし、復興庁のトリチウム君も酷いな。中国と変わらないレベルのイメージ操作。麻生発言もどうかね。

民主化要求をするアメリカの死神

東京の在日中国大使館は4月29日、米国を死に神になぞらえて批判する風刺画を公式ツイッターに投稿した。批判が相次いだことで、5月1日までに削除する騒動となった。

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そもそも外交に関わる大使館がこういうツイートをするのは論外だが、米国批判をするなら日本ではなく米国でやったらどうでしょうか。

この風刺画を更にパロった台湾のパロディ画

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香港の次は台湾の民主主義を弾圧、さらに沖縄や北海道を狙っている。これはリアルですね。日本人は危機感が足りないな。

中国の点火VSインドの点火

中国の治安・司法部門を統括する共産党中央政法委員会が4日までに、短文投稿サイトに新型コロナウイルス感染が急拡大するインドを皮肉る投稿をして、物議を醸している。死者を火葬する様子を、やゆするような表現があり、「不謹慎」と批判が殺到。投稿は削除された。

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中国国内のツイートだが、人間性すら疑いたくなる。こういうのが司法や治安を統括していると思うと恐ろしい。

8カ国連合軍の復活

中国の漫画家が自国を牽制する考えを明らかにした世界主要7ヵ国(G7)外相を120年前に中国を侵略した8カ国連合軍に比喩した。

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120年前の8ヵ国連合軍は義和団事件の事。清朝政府が列強に宣戦布告し8ヵ国連合軍との戦争に発展、1900年に連合軍が北京に侵攻した。敗れた清朝は列強と北京議定書を締結、中国分割がさらに進んだというもの。

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中国人から見た西洋列強のイメージって、120年前と変わらないのですね。

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中国のイメージも120年前のままですが(笑)

おしまい

リトル・ミス・サンシャイン

リトル・ミス・サンシャイン   2006年

ジョナサン・デイトン&ヴァレリーヴァリス監督

物語

全米美少女コンテストで地区代表に選ばれた9歳のオリーブは家族のミニバスで会場を目指すが、同行するのは問題だらけの家族たち。道中で起こるいざこざを描いていく。

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2006年サンダンス映画祭にプレミア放映され評判となり全国上映となる。世界興行収入は1億ドルを超えた。第79回アカデミー賞では作品賞を含む4部門でノミネートされ、脚本賞助演男優賞を獲得した。

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娘オリーブちゃんの少女ミスコンへの出場が決まり、問題だらけの一家がオンボロバスに乗ってカリフォルニアの会場を目指す。道中に起きる多くの困難を乗り越えて、バラバラだった家族は一つにまとまっていくファミリー・ロードムービー

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黄色のオンボロバスがいいや。道中でクラッチが壊れてしまい、押さないと走り出さなくなってしまう。信号とか無いハイウェイをひたすらに走る、なんか西部時代に幌馬車で移動した開拓民を思わせる。ゴー・ウエスト!これ、アメリカ人のツボなんだろな。

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お兄ちゃん(ポール・ダノ)が印象に残る。誰とも口を聞かなかったのが、いろいろあって、最後には家族に心を開くようになる。(展開がミエミエだけど)いいシナリオだな。

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アメリカのファミリー・コメディらしいキャラとドタバタした感じですが、最後は家族愛を感じさせる、まとまりのいい映画でした。

※今年19本目の映画鑑賞。