手塚治虫の山
手塚治虫の山・自然・動物を舞台とした漫画を集めた短編集。収録作品は以下10編。
「魔の山」「山楝蛇」「山の彼方の空紅く」「モモンガのムサ」「モンモン山が泣いてるよ」「ブラック・ジャック -昭和新山-」「雪野郎」「落盤」「山太郎かえる」 「火の山」
短編ながら一作一作が深い。いまさらだけど手塚治虫は天才だなと思う。収録された漫画では以下の四作が特に印象に残った。
山登りを趣味とする青年、間ケンは、遭難者を救出するため、ベテランクライマー佐佐木とともに多羅魔岳の難所「牛の舌」へ向かった。
手塚治虫がこんなジャンルも描いていたのは知りませんでした。ハラハラするようなクライミングだけでなく、彼の生い立ちや遭難者の救出の顛末などドラマが良い。キレのある作品。
モモンガのムサ
ムサは千二百歳のクスノキのてっぺんで生まれた。生後すぐ父に捨てられたが、下の枝に引っかかり、クスノキの声に励まされてひとり生き延び成長。母兄弟との再会を経て、猟師の息子久(きゅう)と苛酷な闘いを展開する。
動物を主人公にした作品ですが、ファンタジーではなく、生きることをテーマにしたリアルな作品。長編でも使えるアイデアなのに、短編で出してしまうところが凄いな。
山太郎かえる
両親を失い人間に拾われたクマの山太郎は、目の前を走る蒸気機関車のしい六(C62)と仲良くなり、やがて汽笛のように吠えるようになる。鎖で繋がれていた山太郎は、友だちのしい六に励まされ、自由への道を踏み出そうとするが…
機関車と熊の友情を描いた作品。漫画では擬人化という手法は珍しくないけど、機関車と熊という組み合わせが斬新だな。
火の山
時は第二時大戦中。北海道壮瞥村に流れ着いた元工員の荒くれ井上昭和(いのうえあきかず)は、急速に生成する昭和新山の観測者三松正夫の助手となった。三松が昭和新山の観測と保護に生涯を懸けた記述は実話に基づく。
昭和新山と三松正夫の実話を、架空の人物、井上昭和を通して描いた作品。ストーリーテリングが巧いなぁ。
※今年一冊目の漫画読書。