金魚のうたた寝

映画、漫画、小説などの話

コーダ あいのうた

コーダあいのうた    2021年

シアン・ヘダー監督

物語

豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるのだが…

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サンダンス映画祭で史上最多4冠に輝き、今年度アカデミー賞を受賞した。タイトルのCODAは「Children of Deaf Adults=耳の聴こえない両親に育てられた子ども」を意味している。

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聴覚障がい者の家庭で生まれ育った唯一の聴者である10代の少女ルビーが、家族と自分の夢とのあいだで葛藤するさまを描いた作品です。

障害者を特別な存在として扱っておらず、普通に笑って泣ける明るいヒューマンドラマでした。

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主役のエミリア・ジョーンズが素晴らしい演技でした。イギリスの女優さんなんですね。本作では9か月に及ぶ手話やボイストレーニングをしたそうです。

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"本年度アカデミー作品賞を受賞した作品"と気負って観ましたが、ありがちなハイスクール・コメディのような感じで拍子抜けしました。過剰な期待をしなければ良い作品です。脚本も出演者も素晴らしく完成度の高い作品でした。

「ドライブ・マイ・カー」が作品賞を採れなかったのが残念でしたが、アメリカの映画賞なのでアメリカ人好みな作品が選ばれるのは仕方ないと思いました。

※今年10本目の映画鑑賞

 

ナイトメア・アリー

ナイトメア・アリー   2021年

ギレルモ・デル・トロ監督

物語

 ショービジネスでの成功を夢みる青年スタンは、人間とも獣ともつかない正体不明の生き物を出し物にする怪しげな一座とめぐり合う。そこで読心術を学んだスタンは、人をひきつける才能とカリスマ性を武器に、トップの興行師となる。しかし、その先には思いがけない闇が待ち受けていた…

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1946年に出版されたウィリアム・リンゼイ・グレシャムによるノワール小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」が原作。監督は「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞したギレルモ・デル・トロ

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3月25日からロードショーで早速、劇場へ観に行きました。ギレルモ・デル・トロ監督が手がけたノワール作品。

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獣人(ギーク)ショーから始まり、読心術や感電ショーなど奇怪な旅の一座など、舞台セットや美術が素晴らしく、物語の世界に引き込まれて行きます。主人公の青年スタンは暗い過去があるようなのですが、この一座の中で才能を開花させます。

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 後半は、一座を飛び出したスタンとモリーの二年後の話になります。本当の意味でのドラマはここから。ネタバレなし。

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本作は1947年に映画化されています。半魚人の映画をリメイクした「シェイプ・オブ・ウォーター」もそうですが、過去の作品を新しく生まれ変わらせるギレルモ・デル・トロ監督の技が凄い。

※今年9本目の映画鑑賞

もやもや日記 : ロシアのウクライナ侵攻

ロシアのウクライナ侵攻が開始されてから一カ月。ウクライナの必死の抵抗により、ロシアの野望はまだ実現していませんが、日々、犠牲者が増えています。毎日伝わるニュースに憤りを覚えます。

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この戦争はロシアが一方的に国境を超えて軍隊を送りウクライナの主権を侵しています。

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ロシアはウクライナ領のロシア系住民の保護を理由に侵攻を開始しましたが、ナチスドイツがポーランド侵攻を開始した際に、ポーランド国内でドイツ系住民が虐待されていることをあげたのと同じく事実でありません。

もやもや

一部の言論では、NATO拡大に対するロシアの反発は当然だとか、ゼレンスキーの政治的な未熟さが戦争を招いたという意見があります。

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見方や立場を変えれば、と言うのも一つの見識には違いないですが、正義や公正の欠如した相対化にもやもやします。ロシアの侵略戦争を正当化する余地はありません。

戦争の結末

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先の大戦では、日本は原子爆弾による攻撃を受け無条件降伏しました。当時の日本は今のロシアのような立場であった訳ですが、その結末は大変不幸なものでした。

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現在、世界は第三次世界大戦の一歩手前のところにいますが、各国が協力して外交や経済制裁などの武力によらない策でロシアに対抗しています。

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現代の核兵器の破壊力は広島原爆の比ではありません。武力による対決をエスカレーションさせることはできません。

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現代のもう一つの特徴は情報社会。言論統制をしても海外からの情報を完全に遮断できません。

シュワルツェネッガー反戦呼び掛ける動画がロシア国内SNSトレンド入りし、ロシアの国営テレビではニュース生放送中に反戦メッセージを揚げる事件が起きました。

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戦争が長引くにつれロシア国内でも反戦の声は大きくなりますがプーチンの権力は絶大です。21世紀に再来したヒトラーを武力によらず制止できるかどうか楽観は出来ません。

ただ、広島や長崎の不幸を繰り返さないことを願うばかりです。

おしまい。

林檎とポラロイド

林檎とポラロイド    2020年

クリストス・ニク監督

物語

記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界を舞台に描いたドラマ。ある日突然記憶を失った男は、治療のための回復プログラム「新しい自分」に参加する。彼は毎日送られてくるカセットテープに吹き込まれた内容をもとに、自転車に乗る、仮装パーティで友だちをつくる、ホラー映画を観るなど様々なミッションをこなしていく。そんな中、男は同じく回復プログラムに参加する女と出会い、親しくなっていく。

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ギリシャの新鋭クリストス・ニク監督の初の長編映画。2020年ヴェネチア国際映画祭で上映され話題となる。2022年3月11日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開。

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記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界が舞台のドラマ。主人公の男はバスに乗ってから記憶を失ってしまう。医者は記憶が戻ったケースはないと言い「新しい自分」を作ることで社会生活を送れるようにする回復プログラムを勧める。

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プログラムに従って、様々な行動をする主人公は同じプログラムに参加する女性と知り合います。

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SF的な設定で始まりますが、ヒューマンドラマとして終わります。記憶を失った男に試みられる様々なプログラムにも寓話的な意味があったように思えます。技巧い脚本ですが、頭使いすぎかな。素直に感動!という向きの作品ではありませんでした。

※今年8本目の映画鑑賞。

シラノ

シラノ         2021年

ジョーライト監督

物語

17世紀フランス。剣の腕前だけでなく、優れた詩を書く才能をもつフランス軍きっての騎士シラノは、仲間たちからも絶大なる信頼を置かれていたが、自身の外見に自信が持てず、想いを寄せるロクサーヌに、心に秘めた気持ちをずっと告げることができない。そんな胸の内を知らないロクサーヌはシラノと同じ隊に配属された青年クリスチャンに惹かれ、こともあろうにシラノに恋の仲立ちをお願いする。複雑な気持ちを抱えながらも、愛する人の願いを叶えようとするシラノは、溢れる愛情を言葉で表現する才能がないクリスチャンに代わって、自身の想いを文字に込めてロクサーヌへのラブレターを書くことに。

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プライドと偏見」のジョー・ライト監督が1897年のエドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』を原作としたミュージカルを映画化。ロクサーヌ役はジョー・ライトの交際相手のヘイリー・ベネット。

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劇場へ行きました。先週に続きミュージカル映画です。「シラノ・ド・ベルジュラック」を原案にした作品。古典は良いですね、良いから古典として残るのでしょう、面白かったです。

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で、シラノって、醜い大鼻の剣士くだと思っていたのですが、この映画では小人症の男に、クリスチャンは有色人種にアレンジされていました。ダイバシティを意識した斬新なアレンジですが賛否あるかと思います。

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ロクサーヌ役のヘイリー・ベネットが綺麗で素敵でしたね。ラストの盛り上がりがイマイチでしたが、テンポも良く、よく出来た映画でした。

※今年7本目の映画鑑賞

ウエスト・サイド・ストーリー

エスト・サイド・ストーリー 2021年

スティーヴン・スピルバーグ監督

物語

ニューヨークのウエスト・サイドでは、夢や成功を求めてやってきた多数の移民たちが暮らしている。一方、社会への不満を抱える若い移民たちは、同胞でチームを作り、敵対するようになる。そんな中、あるチームのリーダーを兄にもつ女性が、対立関係にあるチームの元リーダーと出会い、惹かれ合う。

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1961年にも映画化された名作ブロードウェイミュージカル「ウエスト・サイド物語」のリメイク作品。

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劇場に観に行きました。ミュージカルの古典ですが、70歳を超えたスピルバーグが監督がミュージカル映画にチャレンジしたことに興味を惹かれました。

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さすがドリームワークス製作、映像も美しく、歌やダンスも素晴らしかった。

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オリジナルとの比較だと対立する移民のプエルトリコを尊重した描き方になっている。1961年の映画はマリア(ナタリー・ウッド)やベルナルド(ジョージ・チャキリス)は白人でしたが、本作ではラテン系の俳優によって演じられています。

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映画、良かったです。60年前より断然に美しい映像と音質。旧作のファンのイメージを損なわないリメイク作品でした。(ちょっと新作のサプライズも欲しかったかな。)

※今年6本目の映画鑑賞

再会の夏

再会の夏         2018年

ジャン・ベッケル監督

物語

1919年、終戦後の平和が訪れたばかりのフランスの片田舎。戦争の英雄であるはずのジャック・モルラックが、人気のない留置所で頑なに黙秘を続けている。彼を軍法会議にかけるか否かを決めるためパリからやって来た軍判事ランティエ少佐は、留置所の外で吠え続ける1匹の犬に関心を寄せる。さらにモルラックについて調べるうち、農婦にしてはあまりにも学識豊かな恋人ヴァランティーヌの存在が浮かび上がる

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フランスの作家ジャン=クリストフ・リュファンのベストセラー歴史小説を映画化。第1次世界大戦後のフランスを舞台に、主人を待ち続ける1匹の犬と勲章をめぐる物語を、美しい田園風景とともに描き出す。

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予備知識なしに鑑賞しましたが、なかなか良作でした。第一次世界大戦で戦地へ行った青年モルラックと一匹の犬の物語です。

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ドラマは、軍判事ランティエ少佐が国家侮辱罪て収監されているモルラックを尋問してモルラックが語る形で進みます。

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戦争はいつの時代でも悲劇です。大切な人を亡くしたり、愛する人と別れ離れになったりします。90分程度の短いドラマですが、戦争の非人間性、平和や愛の尊さを感じさせる良作映画でした。

※今年5本目の映画鑑賞